日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『悪魔くん 魔界大百科』

『悪魔くん 魔界大百科』
水木しげる 小学館クリエイティブ ￥1,200+税
（2017年2月27日発売）

まず冒頭、悪魔くんが試行錯誤の末、魔法陣から悪魔メフィストを呼び起こすまでがマンガで描かれ、続いて、悪魔くんとメフィストのかけあいのもと、摩訶不思議な魔界のキャラクターが次々に登場。さらには魔法のルーツや種類、悪魔に関する豆知識や契約方法など、恐ろしくも好奇心をかきたてる悪魔の世界が魅惑的なイラストとともに紹介されてゆく。

子どもはもちろん、大人も読めばおのずと悪魔が好きになってくる！
ポップかつディープな内容は、古今東西の怪奇幻想の世界に精通し、妖怪博士の異名を持つ水木しげるだからこそ描けたものだ。

本書はもともと小学館入門百科シリーズの1冊として1985年に出版された『悪魔くんの悪魔なんでも入門』を改題、装丁も新たに復刻したもの。
オリジナル版は中古市場でもそこそこ珍しく、価格も安くはないだけに復刻は貴重。
水木しげるといえば、現在も『水木しげる漫画大全集』が絶賛刊行中だが、本作はそういったマニア向けのものではなく、あくまでオリジナル同様、児童書として新装復刊されているのがすばらしい。

昨今は子ども向けの妖怪モノもすっかりライトになったが、子どもにこそ「本物」に触れてほしいよな～と思うわけで。目に見えるものがすべてであるように錯覚しがちな現代だからこそ、こういう「不思議な世界」に触れておくことが情操教育としても重要だとしみじみ感じずにいられない。

というわけで、本作と同時発売の『妖精大百科』とあわせて、子どもへのプレゼントに大推薦。
水木＆妖怪フリークならずとも、最近なんだか目の前のことでいっぱいいっぱいだな～という人は、ぜひ本作で異世界にトリップしてみてほしい。

＜文・井口啓子＞
ライター。月刊「ミーツリージョナル」（京阪神エルマガジン社）にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」（DU BOOKS）寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69