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3月29日は森田健作(タレント、政治家)が千葉県知事に当選した日 『おれは男だ!』を読もう! 【きょうのマンガ】

2017/03/29


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

3月29日は森田健作が千葉県知事に当選した日。本日読むべきマンガは……。


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『集英社漫画文庫 おれは男だ!』 第1巻
津雲むつみ 集英社 ¥260+税


2009(平成21)年の3月29日は、タレントの森田健作が千葉県知事に当選した日。
参議院議員、衆議院議員のキャリアを経て県政のトップに。70年代初頭、一世を風靡した「青春スター」の新たなる一歩をワイドショーも大きく取りあげた。

森田健作が俳優として大ブレイクしたのは、テレビドラマ『おれは男だ!』(71~72年放映)。主役を務め、主題歌の『さらば涙と言おう』も大ヒットした。
森田が演じる主人公・弘二が転校してきた青葉高校は、女子高から共学になったために男子生徒の数が少なく、女子生徒が圧倒的な権力を握っている。弘二は、縮こまっている男子を奮い立たせるべく、剣道部を立ちあげる。
そんな弘二を目の敵にする女子のリーダー的存在・吉川操とは顔を合わせればケンカばかりだが、お互いに「敵ながら天晴れ」と思うところも。しだいに相手を意識するようになっていく。

じつはこのドラマの第1話には、『おれは男だ!』原作者の津雲むつみも女子生徒役でゲスト出演しているそうだ。津雲はこの時、まだ10代であったから女子高生として登場するのは自然な流れだったのだろう。
『おれは男だ!』は1967年に15歳で漫画家デビューした津雲むつみの出世作だ。
10代の愛と性を描く問題意識の強い作家という印象が強いが、学園青春マンガのド真ん中を行く本作には、津雲の一番の魅力であるエンターテインメント性がいかんなく発揮されている。
ちょっとしたことでもムキになってしまう10代の男の子、女の子それぞれのまっすぐさ、それゆえの失敗……そして経験や対話から一つひとつ学んでいく姿がまぶしい作品だ。

少女マンガ黄金期といわれる70年代、「週刊セブンティーン」を主な活躍の場とした津雲は、早くから“大人も読める少女マンガ”を牽引した作家といえるだろう。
妊娠した身を抱え、生きていくために家出した葵。その恋人・宗次郎、葵を犯した拓也……3人の人間模様を描く衝撃作『彩りのころ』は1976年のヒット作。
また、実際に起こった連続幼女誘拐事件に材をとった『闇の果てから』(1993年発表)のように社会派ドラマの側面も含みつつ、ヒロインが心の傷と向きあいながら生きていくストーリーは、時代を超えて読み継がれるべき骨太さを備えている。

『花衣夢衣』『風の輪舞』『聞かせてよ愛の言葉を』――おすすめ作品を挙げればキリがない。人間の弱さと強さ、エゴと優しさに注視し、切実なリアルさとロマンあふれた作品に昇華した稀代のストーリーテラー。

本稿の準備中に報じられた訃報には、ただただ「早すぎる」という言葉しかない。2017年3月4日、享年65歳。
津雲むつみが遺してくれた数々の名作を読みかえし、その功績をしのぶばかりである。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」

単行本情報

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