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『実は私は』第22巻 増田英二 【日刊マンガガイド】

2017/04/04


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『実は私は』第22巻


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『実は私は』第22巻
増田英二 秋田書店 ¥429+税
(2017年3月8日発売)


嘘がすぐバレる体質の高校生男子・黒峰朝陽が、偶然から知ってしまった秘密。
それは、ミステリアスでクールビューティーな同級生・白神葉子の正体が、じつは吸血鬼! かつ、とんでもないアホの子! という驚きの事実であった。
正体が周囲にバレたら退学しろと父親にいいつけられている人外少女のために、秘密を守る手伝いをしていく奇妙な連帯関係は、やがて深い絆を生んで恋仲へ……。

……という筋を中心に、ギャグから熱血シリアスまでふれ幅の大きさがうりの学園ラブコメマンガ『実は私は』。「週刊少年チャンピオン」で約4年間に渡って連載が続き、アニメ化もされた人気作が、第22巻をもって単行本でも完結を迎えた。

最終巻では、人間と異種族の分断をはかる前校長・白雪との対決と、葉子を学校から退去させようとする父親の説得という2つの大きなハードルを乗り越える最終決着が描かれ、あとはクリスマスやお正月の季節イベントを通してメインキャラたちの細かいなりゆきをひろいつつ、春の卒業式でしめくくるという構成になっている。
1巻まるごとエピローグにかけたといってもいい話数のとりかたで、大団円にいきついた感慨は非常に大きい。

振りかえってみれば、この作品は、とにかく最初から最後まで『実は私は』という題名の意味が果てしなく拡張されるプロセスであったといえる。


葉子さんの「実は私は、吸血鬼」という秘密はあくまでひとつの発端である。

そこから「実は宇宙人」「実は狼男」「実は未来人」など、キャラクターごとに様々な正体バレが反復され、「実は私は」というタイトルは複数形の響きを帯びていく。

そして人間サイドの朝陽くんや、その幼なじみ・みかん、悪友の岡田なども、「実は私は、あの人が好きなのです」という秘密を抱え、ときにそれを自ら明かしていくことで、「実は私は」というフレーズは単なる立場の問題を超えて、だれにでも普遍的に根ざす内面のニュアンスまで含むこととなる。
最大の難関となる白雪校長や葉子の父は、秘密を明かせば異種族と人間は傷つけあうしかないという考えをもって少年少女を抑圧しようとする。

しかし、メインキャラのみならず、サブキャラ、モブキャラまで、若者たちは自分たちの抱えていたありとあらゆる“実は私は”をぶちまけ、お互いに受け入れあうことで流れを大きく変えてみせる。

つまり作品タイトルがドラマ上のいちばん難しい課題を決定的に解決するのである。
念入りにサブタイトルまで「実は私は」となっている第189話クライマックスの構図は、長期連載のなかで溜めに溜めこんだ青春物語の熱量を一気に放出するようなすさまじい解放感にあふれており、必見だ。

題名を活かす、というアプローチをとことん追求したマンガの好例として、本作は長く記憶にとどめておきたい。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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