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『グッド・バイ』羽生生純(著) 太宰治(案)【日刊マンガガイド】

2017/04/16


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『グッド・バイ』

  
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『グッド・バイ』
羽生生純(著) 太宰治(案) 実業之日本社 ¥1,000+税
(2017年3月17日発売)


羽生生純が、太宰治の未完の遺作『グッド・バイ』をモチーフに描く……この第一報を聞いた時、これ以上のコラボレーションはないと思ったものだ。

太宰治といえば“暗い”イメージが思い浮かぶものの、実際に小説を読んでみれば鬱々とした作品のなかにも滑稽みが感じられる。
登場人物のしょうもなさ、痛々しさが初めはキツく感じられても、結局それが人間だよなぁと生々しく思わされるのだ。
これはまさに羽生生純の作風にも通ずるところ。
異形にして究極の純愛物語『恋の門』を読んだ人ならピンとくるのでは(現在、「コミックビーム」連載中の『恋と問』も要チェック!)。

太宰の『グッド・バイ』は彼のユーモリストぶりがもっともポップに、前面に出た作品である。
主人公の田島が10人近くの愛人を清算する必要にかられ、すごい美人の永井キヌ子という女に協力を仰ぐという筋だ。
キヌ子は見た目の美しさとは裏腹に内面は超ガサツなのだが……。
田島はこの頭抜けた美人を妻と偽って愛人たちに紹介することで、穏便に別れようともくろむ。

さて、本作の主人公・タジマゲドンこと田島毛もまた、愛人とケリをつけようと悩める男。
偶然に再会した高校時代の先輩・別所さんに相談したところ、太宰の『グッド・バイ』の話を聞かされ、自分もこの小説のとおりにやってみようと思い立つのである。
そして、別所(超美人という訳ではない)にむりやり“キヌ子”役を頼みこみ……!?

早期に絶筆となった小説『グッド・バイ』では、主人公とキヌ子の関係がいずれ変わっていくことが予想されたもののそこは書かれずじまい。
そのモヤモヤ部分にひとつの回答を与えた本作の登場は歴史的事件だ!
シンプルな構造ゆえに、ストーリーがどっちに転ぶかまるで読めない羽生生らしさも炸裂。
人が何を考えているかなんてわかるものではない。そして自分の心も。
人間の存在自体がミステリー、深刻そうなもめごともハタから見ればすべてギャグ。
キャラクターの絶妙な表情から湧き上がる不条理にハッとしたりニヤニヤしたり。

なお、巻末には小説『グッド・バイ』が全文掲載されている。先に読んでも問題なし、あとから読むもよし。どちらにしろ、マンガ『グッド・バイ』の世界をより楽しむためにご一読をおすすめする。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」

単行本情報

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