『蜜の島』第3巻
小池ノクト 講談社 \552+税
（2014年8月22日発売）

昭和22年。復員兵の南雲は亡き戦友・貴船との約束を果たすため、彼の幼い娘・ミツを見つけ出し、故郷へ送り届けた。しかし、そこは地図に記載されていない謎の島だったのである。

離島だからという一言で片付けるにはあまりにも土着的な、近代社会離れした雰囲気が、違和感を醸し出す。南雲が道中で知りあった内務省の瀬里沢はGHQの命を受けてこの島の調査に来たのだが、先行していた彼の同僚は無残な姿で発見され……そして、これを皮切りに奇怪な殺人が次々に起こり始めるのだ。
どうやらこの島には、国造りや明治維新の歴史の関連する重大な謎が秘められているようだ。だれを信頼してよいかもわからず、続々と起こる事件に恐怖し、振り回される南雲とは対照的に、淡々と自分のペースを貫くミツの表情もある種異様である。

この島の血族であるミツは何を知っているのか。定期航路のない孤島は、大きな完全密室だ。
因習渦巻く辺境の地を舞台に、横溝正史作品を思わせる本格サスペンスが展開する！

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」