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『麦の惑星』 第2巻 鳥野しの 【日刊マンガガイド】

2017/05/21


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『麦の惑星』

  
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『麦の惑星』 第2巻
鳥野しの 祥伝社 ¥680+税
(2017年4月8日発売)


『ボーイ★スカート』『オハナホロホロ』の鳥野しのが描く、SF×パン屋という異色作。
地球、現代日本のとある山に不時着した宇宙人が、山のなかにあるパン屋“ほたるベーカリー”の若き店主とともに暮らすことになる。

こういう筋書きで、地球人の心の機微を宇宙人が合理的な思考で不思議がる……というところだけピックアップすると『ラブラブエイリアン』みたいな毒舌コメント系に思われるかもしれない。
たしかに宇宙人“まみ太”はかわいいし、地球の食べものをおいしいといって食べるところまではそっくりだし、地球人の気持ちの揺らぎの描き方の巧みさも通じるところがある。
しかしこの作品はもっとだいぶ優しい。

“ほたるベーカリー”の店主“紺太”は20代半ばで店を切り盛りしている。先代の店主は祖父“英龍(ひでたつ)”さんなんだけど、紺太のご両親はどうしちゃったの?というと、そこは当初はあえて描かれない。
紺太は昔はグレていたという設定で、お祖父さんの手ほどきを受けてパン職人の道を歩くことになったみたい。

そんなところに突然に宇宙人“まみ太”が現れるわけでいろいろすったもんだはあるものの、結局は紺太もさみしかったということで、まみ太は紺太の“弟”をよそおって暮らし始める。
まみ太も紺太も、互いに相手を“さみしいだろう”と思いやってるのがおもしろい。
まみ太は合理的な思考の宇宙人で、そもそも“さみしい”なんて思わない……はずなんだけど、これ絶対伏線だよ……と思うだけで涙腺が反応してしまう人もいるだろう。

まみ太が地球で生きていくためのカモフラージュとして通い始めた小学校の先生(じつは英龍さん時代の“ほたるベーカリー”の常連さん)や、子育て下手で今はめったに帰ってこない奔放な紺太の母親など、個性豊かで不器用だけど優しいキャラクターも登場してきて、まだまだまみ太の周辺は騒がしくなりそう。
このあたりは『ボーイ★スカート』にも通じるところがある。でもそれが田舎のちょっとのんびりした空気感のなかで描かれているのがよい。

焼きたてのパンのような、ホッとする雰囲気の良作。桃や無花果の酵母を使ったパンとか、機会があったら食べてみたいなあ。



<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
Twitter:@nnnnnnnnnnn
Twitter:@n11books

単行本情報

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