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『女王の花』第10巻 和泉かねよし 【日刊マンガガイド】

2014/09/12


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『女王の花』第10巻
和泉かねよし 小学館
(2014年8月26日発売)


本作の主人公である亜姫(あき)は、まさに「ヒロイン」という言葉の似合うキャラクターてある。
古代中国を思わせる「亜国」という国の姫君で、不器用なまでに真っすぐで、凛々しくて健気。加えて、彼女に忠誠を誓い、支え続けて想い続ける臣下・薄星(はくせい)もいる。
本作は、そんなヒロイン然としたヒロインが主人公にふさわしい、スケールの大きな物語となっている。

王女として生まれながら、王の第二夫人・土妃(どひ)によって冷遇されていた亜姫。そんな彼女はあるとき、金髪碧眼であることから差別を受けていた奴隷の少年・薄星と顔を合わせる。
薄星は、自分を差別するどころか、その金髪碧眼を素晴らしいものだと讃えてくれた亜姫に、生涯変わらない忠誠を誓う。 しかし土妃によって、その幸せは壊されてしまう。亜姫の母で正妃だった黄妃(こうひ)が毒殺され、亜妃は亜国と勢力を争う黄国に人質として送られてしまったのだ。亜国は完全に土妃によって牛耳られてしまうが……。

美しい絵とセリフが織りなす古代のロマンは、歴史ドラマ好きの読者以外も、おおいに楽しめる。
なにより、主人公の亜姫が魅力的。どんな状況にありながらも自尊心は捨てず、強い気持ちでいようとする亜姫の姿は、まさに読者が「こうあって欲しい」「こうなりたい」と願うヒロイン像。また、薄星はもちろん、亜姫と2人薄星の師である青徹(せいてつ)、そして青徹の兄・青逸(せいいつ)など、彼女の周囲の男性キャラクターたちも魅力的で、それが亜姫のヒロイン像と物語のドラマ性を、さらに高めていく。

本巻で、ストーリーはラストに向かって走り出す。
いったい終着点には、なにが待っているのか。ヒロインという存在が生み出すマンガの魅力に酔いながら、ロマンあふれる興奮の物語を追いかけたい。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。

単行本情報

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