日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『人馬』

『人馬』 第2巻
墨佳遼 イースト・プレス ￥730+税
（2017年4月14日発売）

古来よりこの国に住まう半身半馬の種族“人馬”は、かつて「山神」と崇められた存在だった。
しかし、戦国の世、人間は人馬を戦の道具とみなしてその自由を奪うようになっていた……。

人馬はすなわち和製ケンタウロス。
人智と、速く強く駆ける力を持ち――またそれぞれに個性豊かな人馬たちのキャラクターに、その生きざまに惹きつけられるファンタジー。
とりあえずは、この第2巻をもって第1部・完となった。

長く人間の支配に甘んじながらその機を慎重に待っていた小雲雀は、“赤毛の岩虎”の異名を持つ人馬・松風とともに人の手から逃れ、山を走る！
松風の妹・小梅と合流することができたものの、そこに松風の息子の姿はなく……!?
しかし、肩を落としている猶予はない。一方では、小雲雀たちを拘束していた人間側につく人馬が、彼らに迫っているのだ。

人の叡智と獣の野性をあわせ持つ人馬の暮らしぶりには、抗いようのない運命のなかでいかに“善く生きるべきか”を考えさせられる。
私利私欲を超え、種族の平和を求める者の崇高さに心洗われる想いである。

第2部はWEBメディア「MATOGROSSO」で今夏連載開始予定とのこと。
シリアスさと、ホッと安らぐコメディタッチもほどよいバランスの本作。第1部のラスト近くが急展開だっただけに、次はどのようなエピソードで幕を開けるのか楽しみである。

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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