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『ヒットマン』 第5巻 ガース・エニス(脚本) ジョン・マクリア(画) 海法紀光(訳) 【日刊マンガガイド】

2017/07/09


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ヒットマン』

  
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『ヒットマン』 第5巻
ガース・エニス(脚本) ジョン・マクリア(画) 海法紀光(訳) KADOKAWA ¥3,500+税
(2017年5月18日発売)


知る人ぞ知る傑作アメコミシリーズ『ヒットマン』。
哀愁と苦味をたたえたオッサン“ヒットマン”は、同じゴッサムで活躍するバットマンが不殺の誓いを守っているのとは対照的に、敵を殺して金を貰うというダーティな側面が特徴の殺し屋だ。
無精ヒゲ、サングラス、タバコそして銃という、爽やかさのカケラもなく、男臭くて渋い。そんな物語が、この第5巻をもって完結する。

ヒットマン自身のキャラクターも魅力的なのだが、本作を有名にしたのはなんといっても、本作に登場する脇役たちのチーム“セクション8”、とりわけそのメンバーである“犬溶接マン”ことドッグ・ウェルダーだろう。
“敵に死んだ犬を溶接して倒す”という強烈かつ意味不明な設定の2流いや3流ヒーローのドッグ・ウェルダーたちもこの第5巻で壮絶な最期を遂げる。

ドッグ・ウェルダーのように“タガがハズレた”ような存在は本作の見どころのひとつではあるが、ヒットマンの仲間たちは結局、戦闘が繰り返されるたびにひとり、またひとりと命を落としていく。

「今まではよぉ 人生で自分が主役だって思ってた だが、ある日、すげえ奴にぶつかって 自分なんかそいつの人生の脇役だって思い知った」

完結巻となる第5巻と同時に、第3巻第4巻も発売されたが、第3巻には上記のようなセリフがあった。
スーパーマンやバットマンのように、最初から自分たちが人生の主役であるようなヒーローではなく、彼らの活躍の陰で血と吐瀉物にまみれて死んでいく者たちの物語、それが『ヒットマン』なのかも知れない。

第5巻には、セクション8のメンバーであるフレンドリー・ファイアというキャラクターが次のようにもらす場面がある。

「スーパーバカをやるのは いいかげん疲れちまったんだ 正義の活動とかいいながら 人生棒に振ってる もう終わらせようぜ」

そう。この作品は、疲れながら“正義の活動”をするスーパーバカたちの物語だ。
読者は、彼らがいかに人生を棒に振るのかを噛み締める。
ヤニと汗とカビが染みこんだ場末のバーに漂う、けっして清潔とはいえない雰囲気。
ときに過激で露悪的な彼らの姿は、もはや笑えない。いや笑うしかないのかも知れない。
とにかく何かじんわりと胸に残るシコリがある。
ひとりでも多くの読者にこのシコリを抱えてもらいたい。
ぜひ読んでほしい。すばらしい作品だ。



<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
Twitter:@nnnnnnnnnnn
Twitter:@n11books

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