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8月1日は「水の日」 『太郎は水になりたかった』を読もう!【きょうのマンガ】

2017/08/01


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

8月1日は水の日。本日読むべきマンガは……。


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『太郎は水になりたかった』 第1巻
大橋裕之 リイド社 ¥666+税


「母さん 僕は水になりたいと思った」
『太郎は水になりたかった』の主人公「太郎」が地面に横になる場面のモノローグだ。
そこには友達のヤスシたちがすでに寝転んでいる。
彼らがたまにやる「死体ごっこ」という遊びだ。

8月1日は「水の日」。
水をテーマにしたマンガには傑作が多い。漆原友紀『水域』、しりあがり寿『方舟』、豊田徹也『アンダーカレント』なとなど、その描き方は様々。
「水と空気はタダ」といういいまわしがあるように、少なくとも多くの日本人にとっては水はありふれたものだ。それでいて、雨や川は水害もたらすし、水害は街を蹂躙し、農作物に被害を与える。
そうでなくても、たとえば風呂場で溺死することだって簡単だったりする。

『太郎は水になりたかった』の、冒頭に引用した箇所で太郎が呼びかけている「母さん」は、太郎が幼い頃に、アウトサイダーぎみの「太郎の父」と別れてしまった、太郎にとっては面影にすぎない存在だ。太郎は、ヤスシとともに、スクールカーストの低位に属していて、クラスの上澄みの連中からは嗤(わら)われながら生きているが、ある事件をきっかけにカーストの上位に浮上しかけて、ヤスシとのあいだに距離が生まれてしまう。
うまく生きられない太郎は、はっきりと「死にたい」と思うよりも「水になりたい」と思う。

ヤスシたちと溶けあうでもなく大地に横たわり、死体のように静かに、追憶と憧憬をにじませながら、死のような、死ではないような、そんな状態になりたい、と願うでもなく漠然と思う。

「水になりたかった」という、このタイトルの元ネタはブルース・リーの「友よ、水になれ(Be water my friend.)」らしい。ブルース・リーの力強い言葉とは対照的に、太郎は不安な小心者にすぎない。
水のように不定形な強さ、考えないでゆらゆらとしながら敵を打ち砕く強さではなく、不安定にかたちを変えてしまい、水のように薄く味気ない弱さ、はかなさがそこにはある。

でもそれでいいのではないだろうか。だれかを打ち砕く強さがなくても、薄く味気ない不安な姿にも、輝いたりすることはできる。
「死体ごっこ」は輝きからは程遠いかもしれないが、それでも、やったことある人ならわかるだろうけど、最低限の楽しさみたいなものがある。わからない人はやってみたらいい。死んだふりをしている時にこそ感じられる、生の実感みたいなものってあるのだ。
水の日には、太郎たちの真似をして、地面に寝転がって死体のふりをしながら、水になりたがってみてほしい。



<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
Twitter:@nnnnnnnnnnn
Twitter:@n11books

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