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『寿司 虚空編』 小林銅蟲 【日刊マンガガイド】

2017/09/09


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『寿司 虚空編』



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『寿司 虚空編』
小林銅蟲 三才ブックス ¥1,185+税
(2017年8月10日発売)


『めしにしましょう』でも話題の小林銅蟲の新刊はその名も『寿司 虚空編』。
虚空編……いったい何を意味しているのかはわからんが、タイトルから察するに寿司は出てくるのだろう。多分グルメマンガなのは間違いない。
だって『めしにしましょう』の小林銅蟲だし…………なんて思ったら大間違いだ!

タイトルとは裏腹に寿司要素ほとんどゼロ! かわりに出てくるのは数字、数字、そして数字!
開始2ページ目で何の脈絡もなく、「さて 私たちが日常生活で使うどんな数よりも べらぼうに大きい数について考えていこう」なんて感じで話が始まるのだから、もうたまらない。
そのあともグラハム数やふぃっしゅ数などなどの巨大数に関する解説がノンストップで続けられ、さらに10ページ使ってひとつの数式を延々と書き続けるなんていう暴挙としかいいようのないパワープレイまで飛び出す始末。
あまりにも突拍子のない話の展開や、気軽な感じで出てくる普通に生きていたらなかなかお目にかからない数式の数々に読んでるだけでクラクラしてしまう。

中盤以降はいくらかSAN値が回復したのか、情緒不安定なプロレスラーや、著者の別作品である『さいはて』のキャラクターが登場して、比較的正気を取り戻したようなストーリー展開も見せるが、それでも巨大数に関する解説は止まらない。
ってか寿司要素はどうなったんだよ!と叫びたくなるが、それに関しては巻末の描き下ろしマンガで説明しているのでそちらをどうぞ。

本作はもともとは2013年からWEB媒体で連載されたものであり、作品としては『めしにしましょう』より前の作品なのだが、合間合間に見せるシュールなギャグや台詞まわしは、この頃から健在。

グルメ的なものを期待する人にはオススメできないが、普通に生きていては認識できないめくるめく巨大数の世界に足を踏み入れたい方々はぜひどうぞ。
あと、身近に数学科に進んだという方がいる人はオススメすると喜ばれるかもしれません。



<文・犬紳士>
養蜂家。好きな野鳥はメジロ。
Twitter:@gentledog

単行本情報

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