日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『完全版 サイコ工場Ω線』

『完全版 サイコ工場Ω線（オメガライン）』
谷口トモオ リイド社 ￥1,389+税
（2017年11月2日発売）

幻の傑作ホラーと謳われた「サイコ工場」シリーズが、20年の時を経て奇跡の刊行！

90年代にシリーズとして発表された一連の作品、また同シリーズに類するものとしてセレクトされた短編群を、『サイコ工場Α線（アルファライン）』『サイコ工場Ω線（オメガライン）』の2冊に収録。
ホラー好きなら迷わず2冊そろえておくべし！

鮮血ドバァ、臓物グッチョリが景気よく繰りだされるドライブ感が心地いい。
どの画面も独創的であり、物語の展開も多彩だ。オチがピシャッとキマっているタイプもあれば、無茶苦茶にエスカレートする昂揚感でグイグイ突き進んだり、幻想的な味わいを残すものもあり。
洗練された筆致から超然と描きだされる非道な画面の数々は、ドライな語り口に映えて痛快極まりない。ハードコアなのに淡々としてどこかライト。何がマトモで何が狂っているのかわからなくなってくるような幻惑的な感覚に身をゆだねる快感は、クセになる。

ちなみに巻末の著者による全作解説では、執筆当時に影響を受けた映画や漫画家の名前を惜しみなく列挙しているのもますます興味深い。
「幻の」という冠はいったん脇に置いても……ともかく2017年現在、この鮮烈な作品たちに出会えたことに感謝したい。さらなる未単行本化作品や新作を読むことができますように！

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」