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『妄想少女』汐里 【日刊マンガガイド】

2014/11/16


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『妄想少女』
汐里 講談社 \600+税
(2014年10月23日発売)


この作品のタイトルにある「妄想」というのは、「美女と野獣」のこと。諸説あるなかでも有名なのは、美女が野獣の本当の優しさを知って愛することで、野獣が王子に戻る話だろう。
では現在の「野獣」とはなにか。歪んだ性欲に身を任せる犯罪者だ。

清純派美少女の神宮寺花音(じんぐうじかのん)。合コンのような軽薄な恋愛にはいっさい興味がない。
彼女が望むのは、性的に歪んだ感情を持ち、実際に行動してしまうタイプのダメな男たち。全員まったくモテそうにない。
彼女は、狂気にも似た男たちの性の目にさらされることを選び、すべて許容しようとする。

「執着という芽に、愛情という水を注いでやれば、きっと咲くはずです。恋という花が。そしてその魔法は、彼を王子様に変えるのです」

「妄想」というには、ちょっと危険すぎる。本当にレイプされる可能性だってある。
むしろ彼女は、レイプされるくらいの歪んだ熱情を望んでいる。自分の愛で、相手のすべてを受け入れようとしている。本当の意味でケダモノな人間を受け入れきった時、野獣は王子様になる、と陶酔しているのだ。

男たちは、ある程度手を出したところで、彼女が自分の罪に気づいているのを知る。すると、たいてい逃げていく。
妄想少女・花音の妄想はたしかに危ない。だが男たちの欲望は、全部受け止められてしまった時、どうしようもなく脆い。
花音の深すぎる愛の指摘によって、男たちがつぎつぎ逃げ出す様は、滑稽で、痛快で、あまりに哀しい。

最後は思わぬオチが待っている。
ちばてつや賞大賞受賞作を含むオムニバス。鋭いメスで、男性の罪の意識を暴き出す。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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