『ホテルサラマンダー』第2巻
サメマチオ 講談社 \581+税
（2014年11月14日発売）

『ホテルサラマンダー』は、デビュー作『マチキネマ』が話題になったサメマチオによる、にぎやかなコメディ。
『マチキネマ』が、ありふれた日常からひょっこり顔を出す非日常を描いたのに対し、本作はその構造を反転させたような作品だ。

舞台は謎めいた大富豪が作ったホテル。
口の悪い支配人を筆頭に、執事ロボ、超高級店を辞めた中華料理人、そばかすの天然メイドなど、メンバーは個性派揃い。そして、お客様も変わり者ばかりだった……。

最新2巻でも、執筆に集中するとポルターガイストを起こす人気作家や、ダイエットに励む雷神様が宿泊し、ホテルは大騒動に！

こうした風変わりなホテルのなかで見えてくるのは、人間が普遍的に持っている仲間との連帯感や優しさ、誠実さ……。非日常的空間だからこそ温かい日常が浮かび上がってくる。

コマ割りにも工夫があって、カッチリと落ち着いた『マチキネマ』に比べて、本作はページごとにガチャガチャとしたコマ構成で、登場人物のアップも多用。見た目からもホテルのドタバタ感が伝わってくる。
最初は少し読みづらいと感じたが、いつの間にかハマる。入りにくかったお店が、通ううちに居心地がよくなるのと同じ現象だろうか。

＜文・卯月鮎＞
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」（早川書房）でライトノベル評（ファンタジー）を連載中。
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