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12月5日は2008年にホンダがF1撤退を表明した日 『Fの閃光』を読もう! 【きょうのマンガ】

2014/12/05


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『Fの閃光』第1巻
西村幸祐(作) 長沢克泰/鬼窪浩久(画) 集英社 \379+税


6年前の12月5日、ホンダはF1からの撤退を表明した。サブプライム問題などの金融危機による財政悪化がおもな要因だが、00年からスタートした第3期F1活動で大きな成果を上げられなかった点も背景にあるだろう。
佐藤琢磨が2004年のアメリカGPで3位に入賞した時点では「日本人ドライバーの初優勝も近い!」と大いに盛り上がったが、その夢も叶わず。トータル8シーズンの参戦で優勝したのは2006年のハンガリーGPのみ(ドライバーはジェンソン・バトン)。活動末期の07年、08年にいたっては低迷の一途であった。

しかし2013年、日本のF1ファンに朗報が飛び込んだ。2015年シーズンからホンダがF1サーカスに復帰することが発表されたのだ。
しかもコンストラクターはあのマクラーレンである。バブル絶頂期にセナとプロストという2人のスーパードライバーを擁して連勝を重ね、空前のF1ブームを日本にもたらした伝説のチーム“マクラーレン・ホンダ”が23年ぶりに表舞台に戻ってくるのだ。

振り返ってみると第2期ホンダF1の快進撃はすさまじいものがあった。88年から91年まで4年連続でコンストラクターズ・チャンピオンに輝き、88年には16戦15勝という未来永劫破られないであろう記録を打ち立ててしまった。
単純には比較できないが、圧倒的な強さを誇った今季のメルセデスでも19戦16勝と3つの取りこぼしがあったことをかんがみても、どれだけすさまじい記録かがうかがい知れる。

日本でのF1人気は、当然のごとく小中学生にも波及。
「週刊少年ジャンプ」は91年シーズンのマクラーレン・ホンダをスポンサードし、セナとベルガーが駆るMP4/6のノーズには、小さく「ジャンプ」のロゴが貼られていた。

このスポンサードと連動してスタートしたのが『Fの閃光』である。
全16話(コミックスは全2巻)にわたって連載された本作は、セナが3度目のワールドチャンピオンに輝いた91年シーズンを中心に、F1サーカスの舞台裏を描いた実録モノ。
久しぶりに読み返してみると、90年代の「ジャンプ」作品とは思えぬほどの劇画タッチに驚かされる。作画のクオリティは異様に高く、長沢克泰&鬼窪浩久のコンビは「F1は、観るのは楽だけど、描くのはもうこりごりですね」と2巻の折り返しで愚痴っているほどだ。

ただし、あまりにも実録に特化しすぎて、マンガとしてのエンタメ性は希薄。専門用語や人名、固有名詞も頻出するので、かなりのマニア向け作品であり、一般読者から支持を得たとは言いがたい作品だった。
それでも、本作は当時のF1ブームの熱さをパッケージした作品としては貴重な資料である。

もはや地上波からも中継が撤退し、冷えこむ一方となっている我が国のF1人気。ブーム再燃の鍵はマクラーレン・ホンダにかかっている。
なかなかツキに恵まれない小林可夢偉がマクラーレン・ホンダのシートに収まる可能性はないのだろうか? 再びジャンプでF1マンガが連載される日が来るほどの盛り上がりを、期待せずにはいられない!



<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。東京都立川市出身。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。
「ドキュメント毎日くん」

単行本情報

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