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『軍靴のバルツァー』第7巻 中島三千恒 【日刊マンガガイド】【総力リコメンド】

2014/12/25


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『軍靴のバルツァー』第7巻
中島三千恒 新潮社 \552+税
(2014年12月9日発売)


ジャンルとしては「戦記もの」、そして第一次世界大戦前のヨーロッパをモデルとした架空の世界が舞台のこのマンガ。
いわゆる、“戦争モノはちょっと……”的な人にも、「これ、読まないともったいないですよ!」と声を大にして言いたい。何かしらの先入観は、きっといい意味で裏切られることになるからだ。

軍人として出世街道を歩んでいた主人公のベルント・バルツァーが、同盟国へと軍事顧問として出向を命じられるところから物語はスタートする。
少年たちの軍事訓練が主な仕事であり、最初は本人としてもあまり気乗りがしない。だが、数々の問題を解決していくうちに生徒たちと交流を深めていくという、じつは「教師もの」のウエイトが大きいというのが、本作初期の重要なポイント。
そこでまず「なるほど、そういうマンガだったのか!」という意外性がひとつ。そして、やがては戦争という大きなうねり、そして王室の政治的かけひきにも主人公が巻き込まれていき、ただ戦争モノではなく、ダイナミックにストーリーは動き出す。

初期のていねいな人物描写や、この世界の実在感を支える武装や訓練の細かな描写だけでも、十分にオイシイ作品なのだが、単行本で言えば第4巻あたりから“時代が動き”はじめ、加速するようにグイグイと物語に引きこまれていく。
第7巻では、ついに起きてしまったクーデターと、孤立してしまった士官学校といった大きな事件を描きつつ、士官学校から去ることになったバルツァーと生徒たち。さらに「じつは女性でした」とかなり初期に明かされながら、そのことが意外とさらっと流されていたヘルムートの「うわ―――っ!」と言わざるをえない展開(まぁ、それに関しては前巻のドレス姿で最初の“爆弾”が炸裂していましたが!)や、王室内の人間関係など、キャラ方面の盛り上がりもますます見逃せない。

というわけで、くり返し言いますが、ジャンル的にスルーしていた人は「もったいないことをしていますよ!」と断言したい。
様々な要素を含みつつ、それらが分離することなく渾然一体となった、まさに巻が進めば進むほど、噛めば噛むほど味が出るタイプの作品です。そろそろ読んでおいたほうがいいですよー。



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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