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『ウラカタ!!』第1巻 葉鳥ビスコ 【日刊マンガガイド】

2015/01/23


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『ウラカタ!!』第1巻
葉鳥ビスコ 白泉社 \429+税
(2015年1月5日発売)


好きなのは日向より日陰で、まんなかより隅っこ。得意な言葉は「ごめんなさい」で、やることなすこと裏目に出てしまうため、とにかく目立たず息をひそめて生きてきた「ヘタレ目ネガティブ科妄想属男」、七石大学1年生の蘭丸。
そんな彼がキャンパスを歩いていると、そこになぜか逃げる花嫁を追うゾンビたちが襲いかかってきて……!!

葉鳥ビスコの新作『ウラカタ!!』は、映画の裏方を担う「美班」こと映研の美術制作班を扱った、青春ドラマ。
ここで蘭丸が遭遇したのも映画の撮影現場で、花嫁とゾンビの衣装、メイク、小道具は、美班が作り上げたもの。結果として撮影を中断させ、気絶したことで介抱までしてもらった蘭丸は、部長・郷田率いる美班の手伝いをさせられることになる。

一風変わった大学サークルもの、ものづくりのさらなる裏側を描いたドラマとしても楽しい一作だが、本作で大きなテーマになってくるのが、居場所や適性だ。
青春時代は、ただでさえ自分が何者かつかめずに、身の置きどころかも分からない時期。しかも蘭丸は、ある理由から自分の存在意義を認められず、超ネガティブ思考になってしまっている。

そんななか、そろったキャラクターも個性豊かで、手がけるものもまた個性的な美班。
蘭丸は思わぬ特性と長所を発揮していき、情熱をぶつけてのめりこんでいくことにもなる。そんな蘭丸の姿が印象的だ。
裏方ということで、表には出なくても、また表には出ないからこそ、発揮できるものも輝けることもある。

どうしてもはみ出してしまう少年少女が、思わぬところで居場所を見つけ、かけがえのない仲間も得ていくという展開は、作者の代表作『桜蘭高校ホスト部』にも通じるもの。
蘭丸じゃなくとも美班には惹きつけられてしまうはずで、大人の読者には、こんな青春を送ってみたかったと思う人も多いのでは?(かなりハードな青春でもあるのだけれど)

ここからさらに蘭丸がどう変わっていくのか、美班がどんな活動をしていくのか、楽しみなところ。
男性読者もはまること間違いなしの、青春ものづくりドラマ。今後にも期待だ。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。

単行本情報

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