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『ベビーリーフデイズ』 柴谷けん 【日刊マンガガイド】

2015/01/30


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『ベビーリーフデイズ』
柴谷けん 徳間書店 \620+税
(2015年1月13日発売)


第2回「『このマンガがすごい!』大賞」最優秀賞受賞作家による最新作!
「月刊COMICリュウ」に連載された本作は、野生化した“森の子ども”の棗(ナツメ)と、彼を森から連れ帰った椿(ツバキ)という2人の少年の物語だ。

森に育てられたナツメは、土や水から栄養を吸収する「植物体質」(!?)。出会いから10年、2人はともに育ち、ツバキがナツメに土をかけ、水をやって、世話をしてきた。
2人は高校に入学し、学校でもツバキはナツメに水をやる。木陰に隠れ、霧吹きでナツメを濡らしながら、ツバキは思う。
「こんな様子を人に見られてはいけない気がする……」
ツバキのモノローグが流れるそのシーンは、少しだけ、エロい。

しかし、ナツメが日陰者の園芸部員・ビアンカとつきあうことになり、「ツバキの世話はもういらない」と言ったとき、ツバキは認めまいとしていた自分のなかの“ドス黒い本音”、「嫉妬」や「独占欲」、そしてナツメへの「愛情」を知る……。
結局ツバキはナツメをとり返し、第1話「夏至」は、ナツメが自分を「植物中毒」と呼ぶところで終わる。
そう、お気づきのとおり、本作は「植物体質」という比喩を使って表現された、BLストーリーなのだ!

ツバキの「植物中毒」は「ナツメ中毒」であり、「植物依存」は「ナツメ依存」。
作中にはほかにも「オレの植物」「うちの植物」「ほんと手のかかる植物」「大切な植物」……と、植物をナツメと読めば、ツバキの愛情と独占欲がひしひしと伝わってくる台詞がいっぱい。読み進めるほど、2人を(特にツバキを)応援したくなってしまうこと、請け合いだ。

相手が好きで独占したいけれど、このままずっと一緒にいるのが相手にいいことなのか……。
めぐる季節のなか、そんな葛藤を描いたハートフルコメディの傑作、ぜひお試しを。

ところで! 夏は頻繁に水を吹きかける必要があり、秋は(紅葉で)髪が染まるナツメの「植物体質」。
聞けばどうやら「冬はともかく、春はやばいです…」(ツバキ)、「は、春はいかんねっ、けしからんねっ」(小梅)ということらしいので……柴谷先生! 今度は春を舞台に、ナツメとツバキのその後を描いてください!! お願いです~!



<文・藤咲茂(東京03製作)>
美酒佳肴、マンガ、ガンダム、日本国と陸海空自衛隊をこよなく愛し、なんとなくそれらをメシのタネにふらふらと生きる編集ライター。

単行本情報

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