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2月7日は聖徳太子の誕生日 『日出処の天子』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/02/07


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完全版『日出処の天子』第1巻
山岸凉子 メディアファクトリー \1,500+税


「誕生日」って、いつから始まったんだろう?
……いや、人類がこの世に誕生した瞬間から存在しているのは間違いないが、正式な記録として残されるようになったのはいつごろからなんだろう、ということだ。

今回ご紹介する聖徳太子、生前は「厩戸皇子(うまやどのおうじ)」と呼ばれた男性も、「574年2月7日」と今日が誕生日となっているのだが、旧暦法にすると「敏達天皇3年1月1日」(元号すら存在しない時代!)となり、とたんに信憑性が怪しくなってくる。
なにせこのお方、「厩戸(=厩舎)の前で出まれた」とか「母親の口に観音菩薩が飛びこんで身ごももった」とか、出生時もしくはそれ以前から異常な逸話が多い。

そんな飛鳥時代の有能な官僚にして、手厚い仏法の保護者である聖徳太子を、大胆な解釈でマンガの主人公にすえたのが『日出処の天子』である。

国家宗教に端を発する物部家と蘇我家の争いに辟易していた蘇我毛人は、ある日、天女と見まがうばかりの美しい少年と出会う。
父・馬子の朝参に従った毛人は、宮中で少年に再会、彼が厩戸王子と知る。毛人の目の前で不思議な力を見せる厩戸に、毛人は畏れと同時に言い知れない魅力を感じ始める。

超能力そのものは聖徳太子エピソードにも頻出するが、本作の厩戸王子は頭脳明晰かつ冷静沈着で、美しい顔をしながらみずからの障害=政敵を排除していく魔少年として描かれる。
物語は厩戸王子が推古天皇の国政協力者(連載当時は「摂政」と呼称)になったところで終わるが、のちに毛人の息子・入鹿が、厩戸の息子・山背大兄王を暗殺し、これがきっかけで「乙巳(いっし)の変」というクーデターと「大化の改新」につながる“悲劇”を考えると、ある意味きれいな落としどころだったのではないだろうか。

今から35年も前に生まれたマンガだが、変わらず歴史ロマンの奥深さを伝えてくれる作品だ。



<文・富士見大>
編集プロダクション・コンテンツボックスの座付きライター。『衝撃ゴウライガン!!兆全集』(廣済堂出版)、『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、平成25年度「日本特撮に関する調査報告」ほかに参加する。

単行本情報

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