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2月15日は日本初のシネマトグラフ興行が行われた日 『デラシネマ』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/02/15


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『デラシネマ』第1巻
星野泰視 講談社 \543+税


1897(明治30)年の2月15日は、実業家・稲畑勝太郎が日本で初めて「シネマトグラフ」による映画興行を行った日。

シネマトグラフは、撮影と映写の機能を持つ複合映写機だ。
これ以前にあった「キネトスコープ」は、スクリーンに映写する機能はなく、撮影された映像をひとりずつ箱をのぞきこんで見るもの。たくさんの人がいっしょにスクリーンで鑑賞できる映画スタイルを確立させたのは、このシネマトグラフが世界初だったのである。
その後、日本でもサイレント映画を経て、音声が同時に入るトーキー映画時代へと進化しながら、映画は国民の一大娯楽へと発展を遂げていく。

『デラシネマ』は、日本映画の黄金時代といわれた戦後の映画界を舞台に、映画に大きな夢を抱く2人の男を主人公にすえたドラマである。

昭和28年。大手撮影所に所属する、いわゆる大部屋俳優の宮藤武晴は居合いには自信ありだが、まわってくるのはセリフも立ちまわりもない端役ばかり。
助監督の風間俊一郎も、持ち場は違えど同じような境遇だ。助監督とはいえ雑用仕事ばかりで、こんな調子ではいつ監督になれるものやらわかったものではない。
「型にはまった古くさい時代劇ではなく、リアルな映画を作り上げたい」という理想に燃える心……そんな共通項を持つ2人は、いつしか同志として共鳴しあうように。旧態依然とした格やしきたりが立ちふさがるなか少ないチャンスをたぐりよせ、自分が映画に映しだしたいものを前のめりにアピールするのだ。

黄金期ゆえ膠着しがちな業界で、映画に新しい風を吹きこもうとする若い熱意、そして彼らのアプローチもしっかりと描きこまれ、どこをとっても濃厚な読みごたえ。
夢と野望をむきだしに、底辺からのし上がろうとする2人の姿がまぶしく、胸を熱くさせるのだ。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」

単行本情報

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