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『フォービリオンナイツ ~久正人傑作短編集~』 久正人 【日刊マンガガイド】

2015/02/27


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『フォービリオンナイツ ~久正人傑作短編集~』
久正人 アース・スターエンターテイメント \600+税
(2015年2月12日発売)


『ノブナガン』『エリア51』で、そのマニアックかつシビれる世界観を知らしめた久正人による、初の短編作品集。
作者本人曰く「本来であれば、誰の目にも触れぬまま想い出となるだけだった物語」などと謙遜したあとがきが添えられていたりするのだが、まったくもってとんでもない! うかつにもまだ久正人という才能に気がついていなかった人が多かったであろう時代の作品が、こうした形で読むことができるのはうれしい限りだ。

とくに表題作の「フォービリオンナイツ」は、『ノブナガン』でも顕著に見られる、設定やネーミングに光る抜群のセンスが爆発しまくっている快作。
ジャンル的にはいわゆる「妖怪退治モノ」……と思わせておいて、さらにひねった(もしくはヒネクレたともいう)仕掛けがあるのは読んでからのお楽しみということで伏せておくが、モノノケ退治の依頼に訪れるのが、国立科学技術博物館所属植物園の「剪定課」という、なかなか普通はないチョイスなのがまずシビれるポイント。
その「剪定」するものが、「進化の樹からは伸びすぎた異常な枝」になぞらえたバケモノであり、さらに「剪定」だけあって、ヒロインの使用する得物がたぶん世界一カッチョいい高枝切りバサミのような武器! それだけでなく、その武器とアーマーのシルエットがある妖怪の伝承とも重なっているという、重ねに重ねた設定の妙が、どう考えてもサイコーすぎる。

連載に至らなかったために形になっていないという(解説によれば2話までネームがあるとのこと)つづきが読みたくて仕方なかったりするので、ぜひ多くの人に読んでいただいて「2話も描いて! というか連載して!」という世間の声を大きくしてもらいたいなと個人的には思ったりもする。

あわせて収録されている、ただひたすらヤバいガンアクションを描きまくった「或る仇討ちの話」と、独特のスタイルである画の原点だという「カマイタチの日」もいい感じにボンクラ(もちろん褒め言葉ですよ!)なのだが、さらに作品年表や持ちこみ時代の秘話など、より久正人を深く知ることができる読みもの部分も要注目。
追っかけたい人は必読です。



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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