『役職ディストピリア』第1巻
千賀史貴（作）テルミン（画） スクウェア・エニックス \532+税
（2015年2月25日発売）

RPGでは多くの場合、キャラクターは「職業」を持っている。考えてみれば、出会った時点ですでに必ず何らかの職業を持っているって、なんだかヘンな話。
ましてや中心人物になる「勇者」ってなんなのよ？

このマンガはRPGをメタ視点で描いた作品。拳闘士、調理士、錬金術士などなど、様々な職業のキャラクターが登場する。
彼らは役職を生まれながらにして持っている。だからなかには、鼻水で戦う「鼻魔道士」なんてトンチキなジョブになってしまう人間もいる。理不尽だと訴えたくても、どうしようもない。

「魔王」も概念的なものになってくる。「世界に悪影響を及ぼすモノの俗称」で、現在23代目。絶対悪ではなく、これまた役割。
一方でそれを倒さねばならないのが「討伐士」のトルザ。「勇者」の立ち位置だが、呼び名が違う。

この世界の戦闘は、数値が浮きあがるなどゲーム的に表現される。
では「主人公」がその能力を発揮するときというのは、どんな時なのか。ほとんどの人は事実を知らない。
討伐士に信頼され、ともに魔王退治に向かうというのは、みなの憧れ。多くの役職持ちが、トルザの仲間になろうとする。
「討伐士」にとって大切なのは「ひとりでも仲間を集めること」らしい。たしかにRPGらしいが……？

とにかくネタバレが致命的な作品なので、まずは読んでほしい。生まれながらに「主人公」であるとはどういうことなのかへの、ひとつの解釈が描かれた作品だ。WEBマンガとして発表された原作とも比較するとおもしろい。
彼の進む道に、蘇生の魔法なんてない。それが「主人公補正」の背負う宿命だ。

＜文・たまごまご＞
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」