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『ヨーソロー!! -宜シク候-』第1巻 三島衛里子 【日刊マンガガイド】

2015/03/25


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『ヨーソロー!! -宜シク候-』第1巻
三島衛里子 講談社 \602+税
(2015年3月6日発売)


『高校球児ザワさん』の三島衛里子が描く、戦中の青春群像劇。
タイトルにもある「ヨーソロー(ようそろ)」とは、「宜う候」が変化したもので、海軍では「定められた針路へ、そのまままっすぐ進め」、転じて「了解」「問題なし」という意味で使われる。

1982年生まれの三島が、戦争をリアルタイムで知るよしもない。だが『高校球児ザワさん』の連載中に亡くなった祖母の遺品から、軍服姿の祖父の写真がごっそりと出てきたとき、70年前の若者たちの想いを作品に反映させたい、という気持ちがわいてきたそうだ。
どんなものを食べ、どんな下着をつけ、どのように軍服を着こなし、どんな敬礼をして、どんなふうに送り出されていたのか……。零戦搭乗員や上官たちの日常が、三島の綿密な取材で再現されていく。
もともと昭和の建物や制服等のディテールに強い関心を持つ三島ならではのリサーチ力に感服しきりだ。

戦時中だからといって年がら年中、悲壮感を漂わせていたわけではない。“ざぱぁ~ん”という波の音を表す柔らかな描き文字からして、のんびりムードが漂い、船上には若者たちの笑い声が響く。
もちろん彼らは自分たちが常に死と隣合わせだということを実感している。そのいっぽうで、明日が来ることも信じているのだ。

戦争とともに過ごすまぶしい青春の日々。彼らの待ち受ける未来を知っていても、目をそむけずに見とどけたい。



<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。4月4日公開・松尾スズキ監督『ジヌよさらば~かむろば村へ~』の劇場用プログラムに参加します。
「ドキュメント毎日くん」

単行本情報

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