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『子連れ同心』 オノ・ナツメ 【日刊マンガガイド】

2015/04/03


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『子連れ同心』
オノ・ナツメ 小学館 \639+税
(2015年3月20日発売)


アーティスティックな独特の絵と、映画さながらのグラフィカルな構図、オフビートで抑制の効いた語り口で、独自のポジションを獲得した感のあるオノ・ナツメ。
時代劇モノも多く手掛けていて、こちらは同心モノでありながら、ほのぼのした味わいが魅力。
「いつもヘラヘラとしまりのない顔をしている」気弱な同心の立花伊織と、我が道をゆく息子の巳太郎の日常が、江戸の四季とともに描かれてゆく。

産後すぐに母(妻)が亡くなったこともあり、通常の父子以上に強い絆で結ばれた2人。決してベタベタした愛情ではない、現代の育児に熱心なイクメンを思えば、むしろ素っ気ないように見える2人なのだが、黙って交わしあう視線や行動、ごくわずかに交わされる言葉がなんとも豊かで味わい深く、余白のある絵とセリフもあいまり、じんと心に響く。
手下や同僚や上司も、そんな不器用だが愛すべき父子を、からかいながらもあたたかく見守っていて、ほっこり優しい気持ちになれる。

初鰹、七夕、月見団子、煤払い、鯨汁、新年の挨拶参り、雪うさぎ、花見、家事、お七夜……といった、江戸情緒あふれる描写も楽しく、何度も読み返して、その世界に遊びたくなる。
これは、ある種のユートピアといっても過言ではない。

ちなみに巳太郎は著者の既刊作『さらい屋五葉』の名脇役、立花伊蔵の子供時代だそうで。
知らずとも充分に楽しめるが、あわせて読めば、さらに味わいも深まるはずだ。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて『おんな漫遊記』連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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