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『ドリー・マー』第1巻 バコハジメ【日刊マンガガイド】

2015/04/13


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『ドリー・マー』第1巻
バコハジメ 小学館 \429+税
(2015年3月18日発売)


夢が覚めなかったとしたら、人は夢と現実を区別できるのだろうか?
夢と現実が判別できなくなる物語は、古くから存在する。映画『未来世紀ブラジル』『マトリックス』などの近未来ディストピアSFでは定番だし、用意された仮想世界で無自覚に生きるという点では『トゥルーマン・ショー』などもその亜種にふくまれるのかもしれない。
そもそも『荘子』の第二篇「斉物論」にある「胡蝶の夢」(夢の中で蝶になって飛んでいたが、目が覚めたとき、蝶になった夢を見たのか、いまの自分は蝶が見ている夢なのか疑う)を引きあいに出すまでもなく、いまの自分を仮の姿ではないかと疑う逸話や物語は、洋の東西を問わず古くから多い。
いわば人類にとって普遍のテーマといえるのかもしれない。

バコハジメ『ドリー・マー』は、そんな夢と現実のテーマをモチーフにしたサバイバル・アクション冒険譚である。
2015年11月30日、空から大量の“羊”が降ってきた。この“羊”の鳴き声は人間を眠らせる力を持つ。そして、眠らされた人間は“羊”に包まれて空に昇っていき、目覚めることなく、幸福な夢を見続ける。
主人公のマサラ・マサト(マーくん)は、不思議な少女ドリーと出会い、自分の人生が「夢」であると気づき、“羊”襲来後の世界の実情を知るのであった。覚醒したマーくんとドリーは、襲い来る“羊”を倒しながら、東京に存在するという地下シェルターを探しに旅立つ。

この第1巻では“羊”に関するルール説明がなされていく。
それと同時に“羊”やドリーや世界に関する数々の謎がちりばめられているので、われわれ読者はマーくんとともに、この妖しく白い世界に一歩ずつふみ出していくような感覚でページをめくることになる。
そして、ドリーの無邪気なかわいさとは裏腹に、襲いかかってくる“羊”の醜悪さにも注目したい。
現実離れしたマーくんと“羊”たちの戦いでは流血シーンや残酷描写といった、ちょっとしたゴア表現もあるが、それがスパイスとなり、先の読めない展開にスリリングな緊張感を付与している。
その読後感は、まるで悪夢のように魅力的だ。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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