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『水槽オペラ』 央川みはら 【日刊マンガガイド】

2015/05/05


SuisouOpera_s

『水槽オペラ』
央川みはら マッグガーデン \618+税
(2015年4月15日発売)


冒頭からいきなり、海に身体を浸し、砂浜を枕に眠っている少年がひとり。
主人公の能登はたて、高校2年生。
不思議なものが大好きな彼は、変わった模様の蟹を追いかけて、いつの間にやら海で寝入っていたらしい。
びしょ濡れで登校する途中、本を読みながら歩いてきた長身眼鏡の青年にぶつかる。2人一緒に転がって、青年の顔に思わず見入るはたて。
「……わ。不思議な眸(め)の色」――その日から、はたての心のなかに彼が住むようになった。

青年は、はたての通う高校の保険医、小樽霙(おたる・みぞれ)。
海洋生物研究部の新部長となったはたては、霙に顧問を頼むもののまったく相手にされない。
さらに霙は、弟の青羽以外に興味はないと言いきる。 しかし、新入部員になった二見海月(ふたみ・くらげ)を追って青羽まで入部したため、霙はあっけなく顧問になってくれて……。

このマンガの登場人物たちは、ことごとくピュアで優しい。
不思議大好きで天然なはたてを始め、不器用で無愛想な霙、超ド級の人見知りである海月、その海月を長年想い続けている美少年の青羽。
少年も青年も、時にゆっくり、時に急速に想う相手に接近したり離れたりするが、それがまったく不自然ではない。
むしろ、そのテンポの緩急が絶妙で、彼らの行方をわくわくしながら見守ってしまうのだ。
誰かに惹かれるというのは理屈ではなく、身体が先に動いてしまうという感覚的な部分を、みごとにマンガとして表現していると思う。

じつに透明感のある絵柄で、キャラはもちろんのこと、海や水槽の水、そして魚たちが本当にきらきらと描かれるのも心地良い。
恋をした時の心の動きの不思議さにスポットを当てた全4話+描き下ろし。
気がつけば大事に読み返してしまっている、愛おしい一冊だ。



<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」

単行本情報

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