『ときめきトゥナイト 江藤望里の駆け落ち』
池野恋 集英社 \500+税
（2015年4月24日発売）

『ときめきトゥナイト』……多くの女性にとって、そのタイトルは魔法である。

現アラフォー女性のいったいどれだけの人が、かつてこのマンガに心奪われ、真壁俊に恋したことか！
実際、筆者の親しい友人7人のうち4人の初恋の人は真壁くんだ。

1980年代、破竹の勢いだった少女マンガ雑誌「りぼん」。その黄金期を牽引した本作のヒーロー・真壁俊は、口が悪くてぶっきらぼうな不良少年（ワル）。
プロボクサーを目指す一匹狼のくせに猫には甘く笑いかける彼は、小学生にニヒルという言葉を覚えさせた罪なヤツ。

そんな真壁くんを追いかける主人公・江藤蘭世は、吸血鬼の父と狼女の母をもち、かみついた相手に変身できる魔界人のハーフ。
黒いストレートのロングヘアで明るい性格の蘭世もまた、女子の憧れだった。

コメディタッチでスタートした本作は、除々にシリアスな展開となり、前世までが絡んでくるこの2人が結ばれるまでの紆余曲折に、日本じゅうの女子がドキドキハラハラさせられっぱなしだった。
ゆえに、この『ときめきトゥナイト』というタイトルの夢見がちな響きは、いくつになっても女性が淡く幼く甘酸っぱい少女時代を思い出し、きゅんっ、となる魔法なのだ。

さて、そんな本作に、なんと新刊が！
2013年夏、出生や蘭世へのプロポーズ秘話など番外エピソード8つを真壁俊の視点で描いた『真壁俊の事情』が発売された際は、全国書店に予約殺到、完売続出。今なお健在の乙女たちの真壁熱を見事に再燃させた。

そしてこのたび、そんな乙女たちの星・池野恋先生がやっぱり出してくれたのが、この番外編第2弾『江藤望里の駆け落ち』なのだ!!

タイトルにあるとおり、本巻の主役は蘭世のパパ・望里(モーリ)。物語には、ママ・椎羅(シーラ)との出会いから駆け落ちまでの大恋愛模様が描かれている。
永遠の命をもつ吸血鬼一族であるモーリの、魔界での姿ときたら、とーってもハンサム。ワインと書物を愛する好青年は、毛むくじゃらでできそこないの狼女・シーラと出会う。
容貌に惑わされず、彼女の心の美しさに惹かれるモーリ。密会を重ね、シーラもまた心優しいを愛するように。
しかし、不仲な吸血鬼族と狼族の種族間結婚は、不幸が起こると禁止されていて……。

蘭世の素敵な両親の、ロマンスたっぷりの恋人～新婚時代が楽しめる表題前後編のほか、本巻には蘭世が真壁くんにプロポーズされた後、恋敵（で親友？）の神谷曜子に報告する結婚秘話も同時収録。
後世に伝えたい名作『ときめきトゥナイト』ワールドを一段と掘り下げる新たな金字塔となること間違いなしの一冊です♪

＜文・藤咲茂（東京03製作）＞
美酒佳肴、マンガ、ガンダム、日本国と陸海空自衛隊をこよなく愛し、なんとなくそれらをメシのタネにふらふらと生きる編集ライター。