『田舎の結婚』第2巻
唐沢千晶 白泉社 \429+税
（2015年5月1日発売）

お互いに好き。だからいっしょにいる。
恋愛の時点ではシンプルだったことが、「結婚」を視野に入れた瞬間、さまざまな問題や葛藤が浮かび上がる。 特にそれが“田舎”となると、家のしがらみや周囲の目など、さらにハードルが増えてしまうもので。

巻頭を飾る1編は、母親同士が犬猿の仲である幼なじみ同士の物語。
親に隠れて交際を続けてきた瞬とヒナ。狭い地域のなかでは、噂が広まるのはあっという間だから、バレないためには細心の注意が必要で。

しかし、悪いことをしてるわけじゃないのにコソコソつきあわなければならないストレスも蓄積していく。
「親同士のことなんか自分には関係ない」と思いはしても、毎日のように好きな人の親の悪口を聞かされ続ける環境にいれば、ヒミツにして面倒を避けたいと思うのも当然のこと。

そんな折に、ヒナが妊娠。彼女は若いながらに、愛する瞬との間に授かった子どもを生む気満々。
一方、瞬は内心、親との悶着を思って憂鬱になるばかり。さらには具体的に考えてみたこともなかった結婚への迷いがあふれてきて……。

多彩なシチュエーションと人間関係で「結婚ならではの幸せ」を描き出す短編4本、短いながらいずれも人の心を深く掘り下げた“読ませる”ドラマである。

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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