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『東京百鬼夜行』第2巻 宮川さとし 【日刊マンガガイド】

2015/06/07


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『東京百鬼夜行』第2巻
宮川さとし 新潮社 \579+税
(2015年5月9日)


地方から東京へ出てきて、様々な喜びと せつなさを抱えながら都会の片隅で暮らしている妖怪たちの悲哀を描いた作品も本巻で完結。
著者は、『母を亡くした時、遺骨を食べたいと思った』で話題を集めた宮川さとし。本作でもなんだかくすぐったくもなる悲しみとやるせないおかしみが入り混じる。
ときに人間以上に人間くさい妖怪たちの姿に、心和まされも胸しめつけられもするはずだ。

幼なじみで、プロデューサー兼作家となってセレブ生活を送るなかで小豆を洗わなくなった小豆洗いの北村に、引け目を感じる豆洗い妖怪・小豆八郎。
マッサージで癒されて、「フェイスブックの『いいね!』ボタンを押してもらうよりずっと癒される~」、そんな生活を送っているのは、実家の親から結婚のプレッシャーをかけられているOL妖怪・百目雅子。
妖怪も妖怪なりに大変と感じさせられる……というよりは、彼らの生活は、人間ならばだれしも共感できるような不安・悩み・ストレスばかり。

そんななか、グッと胸を打つのは、2巻の表紙にもなっている座敷童のエピソード。
小学生低学年の頃、当時住んでいたアパートで座敷童と友だちになったケンちゃん。そのケンちゃんも今や中年で立派な社長となっているが、ひとりアパートに住みついている座敷童にしばし会いに出かけている。
「年齢差は開いても 私たちの友情は変わらず続いていた ただ互いに他人行儀な話し方をするようになったのは 私が彼に対して抱いてる後ろめたさとーー 私が童貞を卒業したことが原因だったように思うーー」。

そんなケンちゃんが、座敷童に言えないでいたことが、ひとつ。子どもが、できたのだ。そうなると、座敷童の声も姿もケンちゃんにはわからなくなってしまう。
「あ でも 大丈夫ですよ オイラのことが感じられなくなってもーー 僕はずっとここに住んでるから ケンちゃんの会社は大丈夫ですよ」。そう言う親友に、大人として頭を下げるケンちゃん。そして、しばらくののち……。
うまいなぁ、作者。そうつぶやかずにはいられない。

妖怪たちのちょっとせつなく、ちょっといい話を集めた一冊。
収まりのいいハッピーエンドではなく、うまくいかないことや悲しい現実も踏まえつつ、そのなかでちょっとした光を当てるラストに、ほろりだ。
哀切を知る大人のための『妖怪ウォッチ』。そんな作品だ。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。

単行本情報

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