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『ヤング ブラック・ジャック』第8巻 手塚治虫(作) 田畑由秋(脚) 大熊ゆうご(画) 【日刊マンガガイド】

2015/06/17


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『ヤング ブラック・ジャック』第8巻
手塚治虫(作) 田畑由秋(脚) 大熊ゆうご(画) 秋田書店 \533+税
(2015年5月20日発売)


原典の作品がもはや伝説レベルの名作であるがゆえに、これまでも幾度となく様々なアプローチで新たなマンガとしてリブートされてきた『ブラック・ジャック』。
そして、この『ヤング ブラック・ジャック』はそのタイトルどおりに医大生時代のブラック・ジャック=間黒男(はざま・くろお)を描く物語。リブート作品としては「ド直球」といっても差し支えないものだが、その濃さはただごとではない。
あえていっておきますが、本作はその美しい作画もあいまって、おもに間黒男の苦悶の表情などに注目が集まり、BJならぬBL方面で盛り上がったりもしておりますが、けっして「濃い」のはそっち方面だけではありませんからね!

特に最新第8巻は、原典でも描かれている「間黒男の復讐譚」にまつわるエピソードが超濃厚。
第6巻のラストから第7巻まるまる使って、そしてついに本巻で決着を迎えるのだが、そもそも『ブラック・ジャック』と『どろろ』の百鬼丸のクロスオーバーという時点ですでにテンションMAXだったのだが、よもや間黒男自身の復讐の原点にもつながろうとは……! さらに現代版百鬼丸の誕生物語としても、手塚治虫ファンなら「なるほどこうきたか!」とうならされること必至。

なお百鬼丸はもちろんのことだが、スターシステムによって原典にも登場していた手塚治虫キャラが、ことごとく拾われてリファインされている点にも注目したい。
そういったマニアックなところでも濃いのである。各巻の巻末には、それらのキャラクターが一覧化されているので、意外と原典でなんとなく見逃していたものまでも再発見する人も少なくはないだろう。

そして本巻はほかにも、昭和40年代という時代背景を取り入れて間黒男が人気クイズ番組に出場するという、百鬼丸のエピソードとはうって変わってライトなものも収録されている。
それはそれで、原典にはなかった楽しさに満ちたよさがあるんじゃないでしょうか。

今秋からはアニメ化も決定している『ヤング ブラック・ジャック』、原典にあるエピソードやほかの手塚治虫作品をどうオペするかという点も含めて、今後もますます楽しみである。



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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