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『銃夢火星戦記』第1巻 木城ゆきと 【日刊マンガガイド】

2015/06/19


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『銃夢火星戦記』第1巻
木城ゆきと 講談社 \620+税
(2015年5月22日発売)


こんなに弱いガリィは見たことがない。
いや、まだ火星にいて陽子と呼ばれていた頃の話だが……そのへんの事情は、本作を手に取る人には改めて説明しなくてもいいはず。

『銃夢』とのつきあいはかれこれ25年前、クズ鉄町に落ちてきた少女型サイボーグがスクラップの山から掘り出された時から。
記憶を失っていた少女は、サイボーグ専門医が飼っていた猫の名前にちなんでガリィと名づけられ、それから火星仕込みの機甲術(パンツァークンスト)で大暴れしながらいろんなことがあった。

一度は完結したのちに宇宙編の『ラストオーダー(L.O)』で再起動し、天下一武道会めいたトーナメントが10年ぐらい続いて、掲載誌も移籍したりして、どうなったのかなあ……と遠い目をする人も心配なし。
無印の『銃夢』でもちょこちょこ顔を出してた陽子、つまり火星にいた頃の過去編なので、『L.O』読んでなくても安心。いわば『銃夢』再入門編なのだ。

『銃夢』シリーズでは、とほうもなくテクノロジーが進化した遠い未来で、我々の住む世界とは別種の悲惨と、別種の人間性が描かれてきた。脳がチップに置き換えられても人間といえるのか、それでも気高くあれるのかと。

全身サイボーグの陽子と、左眼と手首を損傷した少女エーリカ。2人の幼い孤児はまだ力もなく、特に手足を満足に使えずリモコンで補助してる陽子に、今のところ戦うシーンがあるはずもない。状況になすがままに流され、吹き荒れる暴力が頭上を過ぎるのを待つのみだ。 そのなかでひとり、世界の理不尽と気高さを背負っているのがニノンという少女。
新入りを気ままにいじめ、気ままに許すのは女王様のよう。で、実際に火星の……意外な正体と、さらに意外な展開は、さすが木城ゆきと節といったところだ。

無印『銃夢』から大昔の出来事だけど、火星統一をめぐる覇権争いも底流に織りこまれており、『L.O』とも深く関わる予感がある。
この物語は『銃夢』の原点であり、数百年にわたるガリィ=陽子サーガの円環を閉じるのだろう。



<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。

単行本情報

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