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『ウルトラマンネクサス』 椎名高志 【日刊マンガガイド】

2015/06/18


UltramanNEXUS_s

『ウルトラマンネクサス』
椎名高志 小学館 \1,200+税
(2015年5月18日発売)


数あるウルトラマンシリーズのなかでも、もっともハードでシリアスを極めた異色作と言って差しつかえない作品『ウルトラマンネクサス』。
まず、ほかのウルトラマンシリーズと違って、ネクサスに変身する「適能者(デュナミスト)」が受け継がれていくのが異色ではあるのだが、最大の特徴は、いわゆる“鬱展開”と呼ばれる方向へ思いっきりアクセルを踏みこんでいる点だ。最初の適能者である姫矢准(ひめや・じゅん)は心にトラウマを抱え、そして全編を通して適能者たちと接点を持つ主人公・孤門一輝(こもん・かずき)(最終盤に至るまで“変身しない主人公”というのも、これまた異色作であるゆえん)の恋人は、彼の心の闇を引き出すために殺され、操られ……と、序盤から「マジかこれ!」と言いたくなるほどのハードすぎる描写の連続。
リアルタイムの放送枠は土曜日の朝7時30分であったが、どちらかといえば「金曜深夜31時30分」ととらえるのが正しい、特撮ドラマである。

そんな『ネクサス』、コミカライズ作品も掲載誌が幼年誌である「てれびくん」だったにもかかわらず、ちっとも子ども向けじゃないのである。
そのため、幼年誌までしっかりチェックしているアンテナの高い特撮ファン(と言っておこう)には非常に評価の高いコミカライズ作品だったのだが、テレビ本編がハード路線を極めすぎて放映期間の短縮を余儀なくされたことにともない、コミカライズのほうも突然の打ち切りという憂き目に遭っていた。

そんな“幻の名作”が、このたび10年の時を超えて奇跡の単行本化! しかも、最終話が描きおろされてきっちり完結するという奇跡オブ奇跡!! つまり“買い”ってことですオラーイ!

作者は『絶対可憐チルドレン』などでも人気の椎名高志。
正直なところ「てれびくん」の連載は1カ月分の放送内容を毎回11ページに凝縮するというスタイルだったため若干のダイジェスト感はあるのだが、あの重いドラマをテンポよく切り取り、そして名シーンは漏らさずすくい取ったコミカライズは、今読み返しても見事というほかはない。

そして最終話が描きおろされたことによって、『ネクサス』の本来のテーマである「受け継がれていく人々の絆」の熱さがストレートに伝わる、単なるコミカライズを超えた「椎名高志版ネクサス」として結実したと言えるだろう。 さらにつけ加えるなら、巻末に収録されている「ウルトラマンネクサス4コマ劇場」が、おまけオンリーにしておくには惜しいクオリティのギャグだったりするので、これはこれで必読!
特に『絶チル』などのコメディ要素が好きな椎名高志ファンは要注目……かも?

なお、あとがきによれば、ダイジェストではない全20巻ぐらいの『ネクサス』という野望もあきらめたわけではないとのこと。
むしろ20巻で足りるのか?という気もしますが、その実現というさらなる奇跡にも期待するしかないでしょう!



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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