『あたたかな針』第1巻
KUJIRA 集英社 \590+税
（2015年5月25日発売）

少年は、不意に心奪われた女性に意外な場所で再会を果たす……。
高校1年生、青春まっさかりの藤井亮太朗の前に、彼女は手芸部の顧問・三木先生として現れたのだった。

亮太朗は男子ながらに手芸が好き。どちらかといえばおとなしめだが、暗いわけでもなく、同世代の女の子たちともフツーにつきあえる。
いっぽうの三木先生は若く生徒たちに親しみをもたれているが、むやみにプライベートをちらつかせるようなことはなく、教師として相応の威厳を保って接するタイプだ。

しかし、そんな三木先生にはとある男性の影が。それに気づいたのは、亮太朗の血の繋がらない妹・結子だ。
結子は同い年の家族で手芸部仲間で、内心、亮太朗に想いを寄せている。

当の亮太朗は、日々、三木先生を見つめるたびに胸は高鳴るけれど、すぐにどうこうするすべもない。
でも、「きっといつかは気持ちを伝える」と確信していて……いよいよその日は近づいている様相だ。

亮太朗、結子、そして三木先生のいまだ断ち切れない“初恋”の行方は――。

一人ひとりの恋の息づかいを感じさせる、たしかな筆致に引きこまれる。

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」