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『のの湯』第1巻 釣巻和(画)久住昌之(案) 【日刊マンガガイド】

2015/07/03


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『のの湯』第1巻
釣巻和(画)久住昌之(案) 秋田書店 \600+税
(2015年6月15日発売)


銭湯が大好きな車夫・鮫島野乃(さめじま・のの)が、下宿仲間の岫子(くきこ)とアリッサとともに、浅草近辺の実在するお風呂屋さんを堪能していく姿を描いた本作。

原案協力が『孤独のグルメ』『食の軍師』の久住昌之ということで、ケレン味たっぷりのマニアックな蘊蓄(うんちく)グルメ&街歩きものを想像すると、いたって健やかな銭湯愛がストレートに描かれていて、やや肩すかしを喰らう。
が、それが銭湯入り放題という条件につられて下町の風呂なしトイレ共同のオールドスタイル下宿に入居希望しただけでなく、そもそもが「汗かいたあとのお風呂がさいっこ―――にきんもちいいから!!!」と豪語する女だてらに車夫になった野乃の一途で前のめりなキャラクターや、釣巻和の繊細でファンタジックな絵とうまくマッチしていて、なんとも清々しく好ましい。
岫子のツンデレっぷり、留学生・アリッサの奔放キャラも微笑ましく、彼女らが素っ裸で繰り広げるガールズトークがまた、最初は恥じらいつつもいつしかリラックスして本音がポロッと……という、リアル銭湯な感じで、なんともイイ湯加減なのだ。

東京の銭湯独自のやわらかな黒湯に、たまらず漏れ出る「はあふぁぁぁぁぁぁ」という叫び。
開店早々の張りたての湯にぽちゃんと浸かった時の「おでんの具になった……」という呟き。銭湯の快楽をリアルに伝える、実感あふれるシーンの数々に、おもわずウズウズ。
建物やタイル絵などの仕様に泉質まで、各銭湯の魅力がいきいきと伝わってくる描写も楽しく、地図などの基本データを含む「ひとくちメモ」も添えてあるので、読めば実際に入りにいきたくなること間違いナシ。

物語の性質上、若い女のコの全裸満載。筋肉質で均整のとれたスタイルの野乃の裸は、いわゆるエロさは皆無ながら、脱ぎっぷりのよさはバツグンで、男性読者にはそのあたりも魅力なのかも?

1エピソード1銭湯の完結スタイルが基本ながら、1巻終盤には、天真爛漫な野乃の過去になにやら秘密がありげなセリフも登場。2巻以降の新たな展開にも期待!



<文・井口啓子 >
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて『おんな漫遊記』連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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