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『黒街』第1巻 小池ノクト 【日刊マンガガイド】

2015/07/08


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『黒街』第1巻
小池ノクト 秋田書店 \600+税
(2015年6月8日発売)


ものすごく、見つめたくない表紙だ。

でもちょっとガマンしてじーっと見てみてほしい。
黄色い背景、ピンクの文字、ゾンビ。
ホラー……にしては何かおかしい。いや気持ち悪いけど、なんだこの滑稽さは。

学校でひと悶着あり、不登校になっていた黒町幸一。
彼の父親はリストラされたあと、なんとか再就職。ブラックな仕事をどこぞでやっているらしい。
家にこもっていた幸一は父親の仕事を知らないが、ある日、忘れ物を届けに父の職場に足を運ぶことになる。

普通のスーパーマーケット。……じゃない。客がいない。
ボサノバがむなしくかかる店内。ある瞬間から、父親の声が響く。
「タイムセール!!」
父親がタイムセールの惣菜を売って? 与えて? いたのは、ゾンビの群れだった。

父親が次々珍妙な仕事に就き、幸一が奇妙な目にあうオムニバス集。
ところどころ、本当に怖いシーンが出てくる。
幸一が家にいたとき、隣人と名乗る謎の人物が、半開きのドア越しに腕をつかんで、意味のわからない言葉を叫びながら襲ってくるシーンなど、本当に怖い。
いっぽう、父親が新しい仕事と称して、ゾンビの群れの上をクレーンでぶら下げられながら、「そのままゆっくり 若干 上に お願いします」と伝えながら移動するシーンは、正直どこまでホラーでどこからギャグなのかさっぱりわからない。

「怖い」と「おもしろい」は紙一重だ。普段と違う不自然なものを見た時に、「怖い」と感じることもあれば、「ユニークだ」と感じる場合もある。
お父さんの仕事は毎回トンチキなものばかり。ふざけんなよオヤジ! と言ったあと、吹き出すか、背筋が凍るかは多分読む人次第で変わる。

1巻はオムニバス形式の、奇妙な短編集。
ラストになって、いっきに今までの話がつながっているのが判明する。
2巻以降、おそらくゾンビやら半魚人やらなんやらかんやら、出てきた変なものがすべてつながっていくはずだ。
でもなんでだろう、大事件が起きてるのに、きっと笑えるんだろうなという気がしてならないんだよなあ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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