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7月9日はイングランド王ヘンリー8世が、4番目の妻との離婚を宣言した日 『王国の子』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/07/09


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『王国の子』第1巻
びっけ 講談社 \581+税


イングランド王・ヘンリー8世はローマ・カトリック教会からイングランド国教会を分離した人物で、王位にありながら文筆家および作曲家としても知られたカリスマでもある。
即位前に起きたイングランドの内乱「薔薇戦争」に端を発する不安定な国内情勢をまとめあげるべく、王位後継者に男性を迎えようと6度の結婚をした王としても知られており、初婚のキャサリン・オブ・アラゴンと1533年に離婚してから、わずか10年で5回も結婚をしている。

なかでも一番の最速離婚記録は4度目の妻、アン・オブ・クレーヴズで、1540年の1月に結婚したものの半年後の今日、7月9日にヘンリー8世は婚姻の無効を宣言してしまった。
その理由は……その……なんというか、ぶっちゃけて言うとアンの容貌にあった。
ヘンリー王の側近でイングランド宗教改革の立役者でもあるトマス・クロムウェルが、宮廷画家ハンス・ホルバインにお見合い用の肖像画を描かせたのだが、一世一代の大仕事に気合いの入りまくったホルバインが“盛って”熱筆を振るっちゃったため、実物を見たヘンリーが「思てたんと違う(怒)!!」となってしまったようだ。
ここにアン・オブ・クレーヴズは離縁され、お見合い写真詐欺の実行犯・ホルバインは国外追放、教唆犯のクロムウェルにいたってはあわれロンドン塔で斬首とあいなった……。

さて、そんなヘンリー8世の逸話をモデルにしたと思われるエピソードが出てくるのが『王国の子』。

物語は北の大国・ネルトの侵攻を受ける王国・ゼントレン宮廷から始まる。
西の大国・ウステンと交戦中に負傷した王・ヘンリーにかわって陣頭に立ち士気を鼓舞したのは影武者のマシューだった。
このように、政情不安が続くゼントレンでは王族およびヘンリーが6度の結婚で作った王位継承候補には代々影武者が立てられるしきたりがあった。影武者候補を探し求めて小劇場をおとずれたウィリアムは、自分が担当する第3王位継承権者・エリザベスにうりふたつの少女を発見する。その少女はなんと男性――ロバートが女装したものだった。

陰謀渦巻く伏魔殿で影武者として懸命に生きるロバートと、彼を支える切れ者のウィリアムが王位継承をめぐって展開する策謀と丁々発止のやり取りをする様がとにかく“読ませる”。
くだんのヘンリー王は序盤で没するが、ロバートとつかの間の交流を果たした影武者・マシューの悲惨な末路が第1巻の見どころ。
世界史に詳しい人ならもちろん、詳しくなくても必ず楽しめる作品です。



<文・富士見大>
編集・ライター。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ)ほかに参加する。

単行本情報

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