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『近藤ようこ初期作品集1 仮想恋愛』 近藤ようこ 【日刊マンガガイド】

2015/08/28


KasouRenai_s

『近藤ようこ初期作品集1 仮想恋愛』
近藤ようこ 青林工藝舎 ¥900+税
(2015年7月25日発売)


1982年に発刊された近藤ようこの短篇集『仮想恋愛』の新装版。
彼女が1980~82年にかけて、主にエロ劇画誌で発表した11の短編を収録したもので、全作品、彼女が24歳の1年間に描かれたものだという。

「男の存在」に精神的安らぎをえるいっぽうで、精神を乱されてゆく女の姿を描いた「ホメオスタシ」、愛欲への妄執から何度も生まれ変わっては身を売り続ける女の救済を描いた「天王寺、参る」、愛憎を抱えながら離れることも結婚することもできず同棲生活を続ける男女の地獄を描いた「逆髪」など。

「女の業/自我の解放と救済」といったテーマは、著者が現在まで寓話など様々なモチーフに託しながら描き続けているテーマだが、ここではそれが文法こそ観念的ながら、都会的な若い男女の物語に託されているのが、今読むと妙に新鮮でもある。

おりしも本作品群が描かれた80年代初頭は、「翔んでる女」といったキャッチコピーに象徴されるように「女性特有の感性や生理感覚」がもてはやされ出した時代だが、著者は恐らく、そんな世間(=男)の価値観や自身の女性性といったものに違和感や居心地の悪さを感じていたのであろう。

みずからを「現代の虚勢された女」と言う著者が描く女たちは、「女」を利用するしたたかさもなく、「女」を捨てる潔さもなく、おのれのなかでくすぶる「女」に翻弄されながらも、本来のまっとうな「女」を取り戻そうとあがき続ける。その姿は、今でいう「こじらせ女子」に通じるものもあり、時代を超えて心をぎゅっとつかまれる。

『仮想恋愛』というタイトルの意味が記された、当時の著者あとがきも必読だ。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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