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『けんもほろろ』第3巻 ハトポポコ 【日刊マンガガイド】

2015/08/30


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『けんもほろろ』第3巻
ハトポポコ 竹書房 ¥743+税
(2015年7月27日発売)


『けんもほろろ』というタイトルがまずいい。

語源の定説は、キジの鳴き声である「けん(ケーン)」とその羽音である「ほろほろ」の組み合わせとされ、キジが無愛想に鳴きながら飛び去る様子=取りつく島もない様を意味する。

この語の成り立ちが、「ハト」とその鳴き声である「ポッポ」の組み合わせから成る作家・ハトポポコ(そのうえ、そもそもハトという鳥の名自体が、パタパタという羽音に由来するというのが定説だ)の作品であることに通じるとともに、意味として、俗に「萌え4コマ」と呼ばれる女子校生たちのゆるいコミュニケーションを描く4コマ作品のひとつであるかのよう装いながら、そのじつシュールなギャグとともに展開される「ディスコミュニケーション(=けんもほろろ)」の側にフォーカスするという、本作の批評的コンセプトをも同時に物語っているというわけだ。

実際『けんもほろろ』の登場人物は、メインキャラの20人(!)がみなとにかく、コミュニケーションの契機に立ちあうたびに――ハトが手紙を届けるというコミュニケーションの媒体であり、なおかつ平和の象徴でもあることとは対極的に――暴力的に追い散らす。

それはたとえば小箱とたんの『スケッチブック』で描かれるような、猫のように気ままな者たちのディスコミュニケーションともまた異なり、むしろ相手の気持ちを読み取ったうえでオフェンシブに――まるでキジが「ケーン」とほかのオスを威嚇するように――コミュニケーションを断ち切っていく。

その点で、この最新第3巻の1話目のタイトルが「気持ち」であり、2話目が「鳥」であるという構成は、いささかできすぎのようにすら思えてくるだろう。
事実この第3巻においては、「鳥」の最後のコマが「焼き鳥」ネタであったことが、ラストエピソード「ゴミ2」の最後のページの「焼き鳥の串」のゴミ箱へとつながるという、テクニカルな円環構造がかたちづくられてもいるのだから。

最後に余談ながら……そんなけんもほろろな20人のなかで唯一と言っていいだろう、過剰なまでにコミュニケーションが成立してしまっている青木みどり(あっちゃん)と村井マキ(マーちゃん)の2人が、第1巻の冒頭キャラ紹介ページに記された変人度ランク(数直線)で最先端に位置づけられていたことは興味深い。
つまり、この『ゆゆ式』を彷彿とさせる2人の密なコミュニケーションこそが、『けんもほろろ』においては――同時刊行の『平成生まれ2』第2巻の帯文が「平成を装う。」だったことと合わせれば、コミュニケーションを装った――ディスコミュニケーションの極北とみなされているわけだ。

<文・高瀬司>
批評ZINE『Merca』(アニメルカ×マンガルカ×ジャズメルカ)主宰。アニメ/マンガ論を『ユリイカ』などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
TwitterID:@ill_critique
Merca公式ブログ

単行本情報

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