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『オバケのQ太郎』第1巻 藤子・F・不二雄/藤子不二雄A【日刊マンガガイド】

2015/09/01


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『オバケのQ太郎』第1巻
藤子・F・不二雄/藤子不二雄A 小学館 ¥490+税
(2015年7月24日発売)


あの『オバケのQ太郎』が装いも新たに、てんとう虫コミックスから刊行!
……と言われてもピンとこない人もいるかもしれないが、じつはこれ、かなり大きな出来事。

『オバケのQ太郎』はいうまでもなく国民的人気を誇ったマンガではあったが、これが現在は藤子・F・不二雄と藤子不二雄Aとなっている2人(およびスタジオ・ゼロ)の完全合作であったため、コンビ解消に伴う諸事情(と言われている)によって、1988年以降は単行本の増刷が行われず、絶版状態に。
2009年に「藤子・F・不二雄大全集」の一部として刊行されるまで、長きにわたって「読もうと思ってもなかなか読めない」という状態が続いていたのである。

なにせQちゃんといえば、今でいうところの“ゆるキャラ”の元祖中の元祖といっても差し支えないであろう存在。そのルックスもさることながら、無邪気で、お人好しで、大飯食らいで犬が苦手……と、一度知ったら絶対に忘れられないほどキャラが立っている。
そのため、Qちゃんに慣れ親しんだ人には想像もつかないことかもしれないが、非常に残念なことに「オバQ空白世代」とでもいうものができてしまっているのも事実なのだ。
こんな愛すべきキャラクターをあまりよく知らずに過ごすなんて、信じがたい損失でしょう!

前述のとおり、2009年以降は『オバケのQ太郎』も「藤子・F・不二雄大全集」で読めるようにはなったとはいえ、なかなかあのボリュームのある本を買うのはそれなりにハードルの高さもあるというもの。
なので、より気軽に買いやすい形で、全12巻が出るのは非常に喜ばしいことである。

この、てんとう虫コミックスとして30年ぶりに刊行された『オバケのQ太郎』は、もちろん「懐かしいなぁ」と思って手に取る人も多いとは思うが、願わくば若い世代にも読んでいただいて、その空白が埋まるといいなぁ……なんて思ったりもするのである。
正直、最初こそは絵柄に若干の「昔のマンガ」的なテイストがあるものの、内容に関してはまさに普遍のギャグマンガ。絵柄も、少し進んだあたりからは古さを感じることもなくなるので、ほかの藤子不二雄作品と同様に、“レトロ”としてではなく、“スタンダード”として読み継がれるべきものだろう。

今回の新装版は、祖父江慎によるQちゃんの魅力をストレートに感じられる装丁にも、そんな「世代を超えたスタンダード」を目指した気概が感じられる。
さらに電子書籍での配信も同時にスタートしているので、今あらためて、自分に合ったスタイルで『オバQ』を身近なものとしていただきたい。



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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