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9月8日は「サンフランシスコ平和条約」が調印された日 『フクちゃん』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/09/08


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『フクちゃん』第1巻
横山隆一 eBookJapan ¥300+税


9月8日は戦後日本にとって重要な一日である。
1951年9月8日、日本はアメリカ合衆国をはじめとする連合国諸国とのあいだで平和条約を締結した。アメリカのサンフランシスコで調印されたため、この条約はサンフランシスコ平和条約と呼ばれている。

このサンフランシスコ会議を取材した、ひとりの日本人漫画家がいた。それが横山隆一である。
横山は漫画集団の中心的存在として活動した作家で、『フクちゃん』の作者として戦前から広く知られていた。まだ日本人が自由に海外旅行ができない時代だったため、横山は毎日新聞の特派記者という名目で現地を訪れたのである。そしてこのとき横山はロサンゼルスのディズニースタジオを訪問し、ウォルト・ディズニーと出会う。

そのときのウォルト・ディズニーとのやり取りは、杉並アニメーションミュージアムの館長を務める鈴木伸一氏(『オバケのQ太郎』に出てくる「ラーメン大好き小池さん」のモデル!)が証言してくれた。
「そこでディズニーが、『あなたのアニメーション見ましたよ』と言ったそうなんですよ。それは戦時中に制作された『フクちゃんの潜水艦』(注・横山は絵コンテのみ参加)という作品のことでした。横山先生はそれで感激して、帰国後にアニメーション制作に取りかかります」(宝島社「smart」2013年6月号)

鈴木氏は横山が設立したアニメプロダクション「おとぎプロ」でアニメーターを務めたのち、藤子不二雄両氏、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、つのだじろうとともに「スタジオ・ゼロ」を創設する。
帰国後の横山は『おんぶおばけ』や、日本初のテレビアニメシリーズ『インスタントヒストリー』を制作。かくして日本の戦後アニメの歴史が幕を開ける。

さて横山隆一の代表作『フクちゃん』は、東京朝日新聞に掲載された4コママンガである。
東京・下町の少年フクちゃんを中心に、その家族や友人とのやりとりが描かれる生活ギャグだ。1936年の連載開始以来、多くの読者から支持されたせいで、戦時中はプロパガンダにも利用された。前述のアニメ映画『フクちゃんの潜水艦』はその一例である。

また、『フクちゃん』は国民に広く知られていたため、アメリカ軍の伝単(航空機からバラまく宣伝謀略用のビラ)の「落下傘ニュース」にも無断使用された。
戦後50年の節目を迎えた際に、横山はアメリカ大使館に対し、このときの無断使用に関する「原稿料」を請求している。請求額は180円。戦時中の相場から算出した金額であり、この「原稿料請求」は横山なりのジョークであった。
これにはアメリカ大使館も応じ、180円を支払うとともに、横山に対して領収書の発行を求めたという。

なお、『フクちゃん』が使用された「落下傘ニュース」は、現在では国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能だ。
また、『フクちゃん』のオリジナル版はながらく入手が困難であったが、いまではebookjapanで電子書籍化している。

日本のマンガ史、アニメ史に大きな足跡を残し、連載開始から35年も愛された元祖・国民的マンガがあったことは、ぜひとも知っておきたいところだ。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

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