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【きょうのマンガ】6月19日は「朗読の日」! おすすめするのは……

2014/06/19


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『黄色い本』
高野文子 講談社 864


本日6月19日は、6(ろう)10(ど)9(く)……という、ちょっと強引にも感じる語呂合わせから「朗読の日」と定められている。つまり、読書を楽しむ日だ。
このサイトを見ている時点で、「読書嫌い」という方は少数派だとは思うものの、今日は読書が持つ魅力を再発見させてくれるマンガを紹介してみよう。

『黄色い本』(講談社)は、『るきさん』などで知られる高野文子の6作目にして、現段階での最新マンガ単行本だ。
表題作である「黄色い本 ジャック・チボーという名の友人」は、読書体験をテーマにした作品である。

主人公は、フランスの作家ロジェ・マルタン・デュ・ガールによる実在の長編小説『チボー家の人々』を読み進める、田舎町の女子高生・田家実地子。
日常の隙間を縫ってマイペースに読書を楽しむ実地子は、現実世界の悩みを小説の登場人物に問いかけたり、小説内での問題を自分と照らし合わせてみるなど、思考を様々な方向へと巡らせながら、読書を進めていく。

細かやな感情表現を積み重ねて演出される読書描写は、まるで自分が主人公の目を通して、作中小説を体験しているかのような臨場感にあふれている。

「小説に共感して感動する主人公」と「その主人公が描かれたマンガに共感して感動する自分」という、入れ子構造のような複雑な感動を呼び起こしてくれる本作。実地子とともに小説世界へと没入していった読者は、『チボー家の人々』読了というクライマックスの「喪失感」も、同時に味合うことになるだろう。

まさに、読書体験の酸いも甘いも凝縮した一作だ。



<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。

単行本情報

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