日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは『G線上のあなたと私』

『G線上のあなたと私』第2巻
いくえみ綾 集英社 ￥419+税
（2015年8月25日発売）

寿退社の当日に、相手に一方的に婚約を破棄された元OLの小暮也映子。兄の元婚約者に片思い中の、イケメンだけど性格が不器用な大学生・加瀬理人。嫁姑問題に悩む子持ちの主婦・北河幸恵。
趣味のバイオリン教室を通じて偶然知り合った、年齢も立場も違う3人の男女の友情を軸にした恋愛コミックの新刊が、約1年半ぶりに登場だ。

宙ぶらりん状態の恋心に、ついにケリをつけようと決意した理人。その結果、3人のバランスにも微妙な変化が。いっぽう、理人の片思いの相手である、バイオリン教室の先生・久住真於にも、心境の変化があり……。

恋か、愛か、はたまた友情か。ほんのささいなできごとが登場人物たちの関係性をゆらがせ、なんともおさまりの悪い状態へと動かしていく。
その関係の割りきれなさ、これこそがまさに「いくえみワールド」。

そして、雄弁に語っているわけではないのに、登場人物の気持ちが、誰のものも痛いほどよくわかる。
まるでヒロインになったような気分でイケメンの言動にドキドキするもよし、とまどう若者たちを引いた視線で眺めてニヤニヤする立場になってもよし、はたまた煮え切らないやりとりにモヤモヤするもよし。

魅惑の優しい世界を、ぜひじっくりと、様々な角度から堪能されたし。

＜文・後川永＞
ライター。主な寄稿先に「月刊Newtype」（KADOKAWA）、「Febri」（一迅社）など。
Twitter:@atokawa_ei