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『よるの教室』 深井結己 【日刊マンガガイド】

2015/10/02


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『よるの教室』


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『よるの教室』
深井結己 コアマガジン ¥639+税
(2015年9月3日発売)


BL作品である『可愛い秘書ではいさせない』では、議員と議員秘書の関係を描くなど、ここ最近の作品ではスーツを着た大人たちを描くことが多い深井結己。
新作『よるの教室』でも読者の期待を裏切らず、登場するのは塾講師と塾長だ。

塾講師を務める曽根は、塾長である堂島のことを密かに想い続けている。しかし堂島は同性。しかも亡き妻を今でも想っていて、その指には指輪をはめたままだ。
想いを伝えたとしてもかなうことはなく、むしろ塾講師として信頼して仕事を任せてもらい、目もかけてもらっている今の関係性を壊してしまうだけの恋。
いっぽう、曽根が個人授業の生徒である松山は、曽根の心と身体に執着して曽根のことをつけ狙っている。そんな、ある夜の教室で……。

絵柄にカップリングに性描写。いわゆるBLと呼ばれるジャンルには、ほかのマンガとは違うところでの数々のポイントがあるが、深井結己作品でまず大きいのは、シャープだけれどシンプルすぎない、スマートな絵柄だろう。そこでまず魅せてくれる。

そのなかで描かれる、スーツ男子たち。スーツはカップリングにも性描写にも味つけとしてつうじるところ。
ただ、深井作品でそれ以上に強く残るのは、スーツに身を包む男たち=社会性ある大人の男たちのそれとは裏腹な不器用で純粋な恋心だ。そうなるとそれはそれでまたギャップ萌え……ということになるのかもしれないが、性描写もカップリングの妙もありながら、恋心をストレートに描いているところにこそ著者の魅力がある。

表題作の前後編とあわせておススメなのが、同時収録の「雪月花きらきら」。両親を事故で失い、遺産狙いの叔母たちを疎みながら、ひとりぼっちで大きな屋敷に暮らす美月。
そんな彼の前に、昔飼っていた梟の生まれ変わりだという男・ユキが突然現れる。2人は屋敷で同居することなるのだが……。

こちらの作品でも残るのは、やはり恋心とそして温かさ。「よるの~」と「雪月花~」を結びつけて描いた描きおろし「午後のお茶会」も収録されていて、あわせて読めばさらに深井ワールドの世界観に浸れるはずだ。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が発売中。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。

単行本情報

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