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『なぎさにて』第1巻 新井英樹 【日刊マンガガイド】

2015/10/26


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『なぎさにて』


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『なぎさにて』第1巻
新井英樹 小学館 ¥593+税
(2015年9月30日発売)


あの新井英樹の待望の新連載。

2011年に人類発祥の地・ケープタウンに不思議な木が生え、その膨張・爆発によって飛び散った樹液を浴びたことにより、半径20キロ圏内に住む17万人が即死。後に30万が癌や急性疾患を発症した。
やがて、その木は世界各地に生えはじめ、いつ来るかもわからない「世界の終わり」を容赦なく意識させられた人々は、すべてを諦めて自暴自棄になったり、刹那的な享楽にふけったり……。すべてが急速に変わり始めた世界で、ごく平凡な女子高生・渚と彼女の家族はぶつかり合い、戸惑いながら、絶望に挑もうとする――。

タイトルは、おそらく第三次世界大戦の核爆発後の世界を描いたネビル・シュートの小説『渚にて』を受けたものだが、ここで描かれる中途半端な終末的世界観は、浅野いにお『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』や、いがらしみき『誰でもないところからの眺め』同様、3.11以降の日本を否が応でも意識させる。
しかし、本作のキモはその設定ではなく、むしろこの限られた日常下において、人はいかに生きるべきか? 家族とはどうあるべきか? だ。

そもそも、人間はいつかはわからないが、ある日突然、望むと望まざるをにかかわらず生を奪われてしまうことは、いつの時代もどんな状況下でも唯一変わらない事実なわけで。あえて「終末モノ」というジャンルを取っ払えば、著者がこれまで自作で一貫して描いてきた「いかに世界の不条理と向き合い、生の実感を持って生きるか?」というブレないテーマが、脈々と浮かび上がる。

渚の父が、若者たちが希望や目標を持てない時代を嘆き、どう子どもたちと向き合ってゆくべきか自問自答するシーンのモノローグは、どこか山田太一ドラマを彷彿させるものもアリ。

『空也上人がいた』を経た、新井英樹が描く「現代のホームドラマ」としても要注目だ。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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