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『ナニワめし暮らし』第1巻 はたのさとし 【日刊マンガガイド】

2015/10/31


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ナニワめし暮らし』


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『ナニワめし暮らし』第1巻
はたのさとし 双葉社 ¥600+税
(2015年9月28日発売)


東京で生まれ育ったデザイナーの茶谷正彦。ブラックなデザイン事務所でコキ使われ、身体を壊したうえにクビになり、抜け殻になっていた彼はひょんなことから大阪のシェアハウス「しまき」の管理人になる。
当初は「街も人もギラギラでコテコテ……ディープすぎてなんだかついでいけないよ……」と引いていた彼だが、関西の食や人情に触れるにつれ、その魅力に惚れこみ、本来の自分らしさを取り戻してゆく――。

てな基本設定自体は、それこそ『逢沢りく』!?  というか、要はベタな王道の「浪速人情もん」なわけで。
『深夜食堂』などと比べれば、“うまい”エピソードでもなければ、人物描写もベタで奥行きや深みがそれほどあるというわけでもない。

本作の魅力は、やはり作中に登場する「大阪のB級グルメ」。しかも、実在する特定の店(しかも、どれも関西人のソウルフードともいえる郷愁の味!)を喚起させるのがミソ。
アメ村の「セイロンライス」、千日前の「肉吸い」、新今宮の「ホルモンそば」……とか書かれた日にゃー、「これってアソコやん!?」と本に向かってツッコんだだけではおさまらず、思わず友だちにメールしちゃいましたよ。(「スーパー王手」の紅しょうがの天ぷらも、泣かせる!)

大阪にかぎらず、どんな街にも、どんな人にも「これぞ我がソウルフード!」と胸を張りたくなる「特別な味」が存在するはずだ。
それは、たとえばお好み焼ならなんでもいいわけではなく、「○○のお好み焼」でなくてはいけない。決してグルメ的な理由ではなく、その「味」とは、街の空気や店のたたずまいや店主の人柄が渾然一体となってかもし出すものであり、いくら同じ材料で同じように調理しても、絶対にそこでしか味わえないものだから。

そんな自分にとっての「特別な味」をどれだけ持っているかで、人生の豊かさが変わってくる。
ことさらに褒めちぎり、推薦するようなものではない、近所のラーメン屋のような「ざっかけないマンガ」ではあるが、そんなこともふと気づかせてくれる。
街と店と人をこよなく愛する人なら、きっと楽しめるはずだ。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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