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『LOBO ポートレイト・オブ・ア・バスティッチ』 キース・ギッフェン、アラン・グラント(作) サイモン・ビズレー(画) 椎名ゆかり(訳) PUNPEE(監) 【日刊マンガガイド】

2015/11/05


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『LOBO ポートレイト・オブ・ア・バスティッチ』


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『LOBO ポートレイト・オブ・ア・バスティッチ』
キース・ギッフェン、アラン・グラント(作) サイモン・ビズレー(画) 椎名ゆかり(訳) PUNPEE(監)
ジュリアンパブリッシング ¥2,200+税
(2015年9月25日発売)


近年、大注目を集めているキャラクターと言えば、マーベル・コミックスのデッドプールだろう。
さまざまな武器&銃器を使って、依頼があればだれでも殺しまくる傭兵にして、ハチャメチャな性格と現実と非現実を超える、破天荒な設定のアンチヒーローだ。

しかし、そんなハチャメチャなアンチヒーローは、ライバルの老舗出版社・DCコミックにも存在する。
その名はロボ。
超回復能力を持つ異星人の賞金稼ぎであり、その目的のためにならオーバーキル(大虐殺)も辞さない。性格はワイルドにして超絶に下品。バイク型の宇宙船にまたがって、葉巻を咥えて宇宙を渡り歩き、スーパーマンをはじめとしたスーパーヒーローとは、目的によっては敵にも味方にもなる。

ある意味、マーベル・コミックスの人気キャラである、デッドプールにウルヴァリンを足したような凶暴かつワイルドなヤツで、マーベル・コミックスのレジェンドであるスタン・リーが、「DCコミックスで一番好きなキャラクター」と公言するほどの魅力を持っているのだ。

これまでも、何度か翻訳コミックスではゲストキャラクター的に登場するエピソードが発表されてきたが、正直「主人公」ではないので、日本での現在の知名度はイマイチ。
しかし、今回その魅力を存分に味わえる、ロボが主人公の単独エピソードがついに翻訳された。
それが、『LOBO ポートレイト・オブ・ア・バスティッチ』だ。

本作は、「最後のザーニア人」と「ロボの帰還」の2エピソードが収録されている。
「最後のザーニア人」は、ロボがある人物の護送を依頼されるというストーリー。一度請けた依頼は必ず完遂するというポリシーを持つロボは、ある囚人の護送依頼を請ける。
そして、その囚人とは、絶滅したはずの最後のザーニア人だった。ザーニア人であるロボは、自分以外のザーニア人をみな殺しにしたと思っていたが、たったひとりだけ生き残りが存在していたのだ。それもロボの小学校時代の担任の女教師にして、ロボの悪行を書いた書籍「ロボ非公認伝記」のトリプ先生。
最大の「殺したい相手」=クソババァとのストレスがたまりまくる珍道中が描かれる。

そしてもうひとつのエピソード「ロボの帰還」は、新たな依頼を請けたロボが、さらなるとんでもない事態に巻きこまれる物語。
ザーニア人護送のギャラが思った以上に安く、金の困ったロボのもとにきた新たな依頼は人探し。
その相手とは、賞金稼ぎを次々と殺しまくる逃亡者ルー。肝心のターゲットとはすぐに出会えたものの、思わぬ強敵であったためにロボはまさかの敗北を喫してしまう。
負けたロボは天国に送られるが、素直に負けたまま死んでいるロボじゃなかった。
生き返って復讐するために、ロボは天国で大暴れしまくる。
はたして、ロボは無事現世に「帰還」することができるのか? ……というお話。

2本とも、ロボのストレスMAX状態の物語が展開するので、基本的にはバイオレンス要素多め&バトル要素多めの仕様。
さらに、展開する会話もインテリジェンスな要素はほぼ皆無で、ただひたすらに暴言と罵詈雑言の嵐! だからこそ、ほかでは味わえない、清々しいほどのオーバーキルが楽しめる内容となっている。

アメコミと言えば、政治的な要素や風刺的な内容などのちょっと「難しめ」な話が魅力でもあるが、それとはまたひと味違う、何も考えずに一気に読める物語なので、アタマの悪いバイオレンス大好きの方々には超オススメです!



<文・石井誠>
1971年生まれ。アニメ誌、ホビー誌、アメコミ関連本で活動するフリーライター。アメコミファン歴20年。
洋泉社『アメコミ映画完全ガイド』シリーズ、ユリイカ『マーベル特集』などで執筆。翻訳アメコミを出版するヴィレッジブックスのアメリカンコミックス情報サイトにて、翻訳アメコミやアメコミ映画のレビューコラムを2年以上にわたって執筆中。

単行本情報

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