日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『レイアイ同盟』

『レイアイ同盟（アライアンス）』
佐倉紫露 小学館 ￥429+税
（2015年10月26日発売）

タイトルを漢字で書けば「霊愛同盟」。
ちょっと怪しげな雰囲気だが、この表題作はハートフルなラブコメディ。
霊が見える少女と、霊を成仏させる使命を負った少年の物語だ。

霊に寄りつかれる体質を持つ女子高生・星宮和希（ほしみや・かずき）。
和希にいきなり「俺の目になれ」と命令したのは、とんでもなく腕っぷしが強くてみんなに恐れられている、学校の暗黒物質（ダークマター）こと結城永ノ介（ゆいらぎ・えいのすけ）だった。

聞けば永之介の家は、先祖代々伝わる剣で霊を切り、成仏させてきた家系。
彼は、それを継がなければならない立場になってしまったという。
しかし永之介には霊が見えない。そこで和希に、霊を切るための助手をしろと言うのだが――。

自分の目に見える存在をすべて大切にしたくて、ついつい霊にさえも入れこんでしまう和希。
あきれながらも、そんな和希を助けてくれる永之介。
2人の関係はとてもいい感じで、ちょいちょい出てくるいろんな霊たちも、なかなか味があって楽しい。
3話で完結する話なのだが、ここで終わるのがもったいないくらいの素敵なストーリーだ。
ぜひ続編を期待したいところ。

同時にあと2本収録されているが、「福徳の百年目」については、霊こそ出てこないが「レイアイ同盟」よりはるかに怖いヤンデレストーリー。
そして『コンプレックス・ハーモニー』は、美術専門高校を舞台にした、絵の才能をめぐってコンプレックスと恋心が交錯するラブストーリー。
いずれも心理描写が巧みで、自然に感情移入できるところが魅力。

次回作も楽しみになる、バラエティに富んだ読み切り集だ。

＜文・山王さくらこ＞
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系＆スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」