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12月9日は国際腐敗防止デー 『公権力横領捜査官 中坊林太郎』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/12/09


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

12月9日は国際腐敗防止デー。本日読むべきマンガは……。


NakabouRintarou_s01

『公権力横領捜査官 中坊林太郎』第1巻
原哲夫 徳間書店 ¥619+税


経済社会のなかで営まれる組織はいくら合理化しても人間が介在する以上、必ずどこかで不正のリスクがひそんでしまうものだ。

ことに国際的・公的な組織で起こる腐敗は深刻である。
民主主義や法治国家の価値を骨抜きにするし、組織犯罪、テロなどの片棒をかついでお金どころか人命へ関わる被害まで生みかねない。

そこで2003年、公務員によるワイロや横領、マネーロンダリングその他の汚職を防止しようという取り組みが条約となり、国連加盟国の大半が署名をおこなった。
それを「国際連合腐敗防止条約」といい、署名日の12月9日は「国際腐敗防止デー」と定められている。

マンガ界にも、汚職と戦うヒーローはしばしば登場する。
今回ご紹介するのはそのひとつ、『公権力横領捜査官 中坊林太郎』だ。

バブル崩壊後、景気が迷走しっぱなしの日本。
総理大臣が米・仏・独の首脳陣に囲まれ、お前ら日本が無能なせいで世界経済がめちゃくちゃだ! と厳しく責められるところから幕は開ける。

そこで即座に可決されたのが「公権力横領罪法案」。
政治家や銀行員などのうち、権力を自分のため不当に利用した者をとっつかまえて財産没収できるという剛腕な法で、その実行機関に属する捜査官が主人公・中坊林太郎である。

ふだんはぴっちり七三分けの髪に黒ぶち眼鏡をかけてペコペコする冴えないサラリーマン風情を演じ、目星をつけた組織へ潜入。
あらゆる知略、工作、そしていざという時には銃をふりまわし腕っぷしもきかせて腐敗の元凶となる者たちを追いつめていく。それが林太郎のスタイルだ。

本作においては、とある銀行本店への潜入調査と、その銀行が抱える不良債権を回収する手際をとおして彼の活躍が描かれる。
ちなみにモデルは戦後日本の法曹界に大きな足跡を残し、整理回収機構の社長などをつとめた故・中坊公平。

このキャラクターの見どころは、ある理由から親について悪く言われることがキレるスイッチになっている点。
腰の低いふるまいで悪党にナメられていた林太郎が超強気に豹変する姿の落差が痛快だ。

「親は関係ねえだろ親は…
俺の前で親の話はよしてもらおうか!」

言葉だけだとかっこいいのかどうか一瞬戸惑うキメ台詞だが、いや、実際読むとかっこいいんですよ!

掲載誌であるジャーナル誌「BART3230」が休刊したことで全2巻と短く終わったが、愛嬌で人を手玉にとる林太郎のスタイルは原哲夫の使い勝手にハマったらしく、のちに『蒼天の拳』の主人公・霞拳志郎のキャラに活かされている。
また、その『蒼天の拳』を連載する「コミックバンチ」誌で、別作家により本作のコンセプトをふまえた『内閣権力犯罪強制取締官 財前丈太郎』が連載されるなど、流れが後に続いたのも覚えておきたいポイントだ。

現実に腐敗があるかぎり、それを鏡写しにしたフィクションのなかで戦うヒーローもたえることなく生まれ続ける。
中坊林太郎は、その筋でひとつの記念碑として今も存在感をたもっている。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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