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『宝石の国』第5巻 市川春子 【日刊マンガガイド】

2015/12/18


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『宝石の国』


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『宝石の国』第5巻
市川春子 講談社 ¥600+税
(2015年11月20日発売)


市川春子が表現への注目をあつめる技巧的な作家であることはあまりに自明だろう。
その硬質な描線に淫し、黒ベタの鮮やかさに見惚れる。
高野文子との比較などとともに、そのエッジな作家性はこれまで幾度も驚嘆とともに語られつづけてきた(その最大の達成としては「Merca β02」の中田健太郎×三輪健太朗×米原将磨×高瀬による「25時のバカンス」論座談会を推したい)。

それらは初の連載作である『宝石の国』にも当然のように引きつがれており、この最新5巻も同様に、いっさい断ちきりを用いないスタイリッシュなレイアウトをはじめ、魅惑的な細部にはこと欠かない。

しかしかといって、市川春子が玄人好みの敷居の高い作家なのかと言えば、そんなことは断じてない。『宝石の国』はそのことをより強く照らし出してくれる一作だ。
ここには、初期作からつづく市川らしいユーモアがあふれ、バリエーションの豊富な属性や関係性(組みあわせ)に彩られたキャラクターたちがかわいらしく息づいている(なお筆者の推し宝石は、ベタながらダイヤ――この第5巻でも月の犬のレプリカと戯れるダイヤの姿をとくと見よ――と、特に初期のフォスフォフィライトである。あとこの5巻では、数多の新たなコンビに加え、60ページに少しだけ描かれる幼き日の宝石たちの姿も見逃せない)。

とはいえ時おり耳にするように、たしかにモノクロのマンガでは、宝石ごとにカラフルに設定された髪の毛による判別ができずに、個性的なキャラたちの見わけがつけづらいという不満は、わからないではない。

なので必要なのは、アニメ化である。
『海辺のエトランゼ』の紀伊カンナさんがアニメーターとして参加した、あの尊いアニメPVが、近い将来、長尺で再来してくれることを望まずにはいられない(欲を言えば永野護さんにも参加してほしいところだが、それでは完成を見るには宝石ほどの寿命が必要になるため我慢します)。



<文・高瀬司>
批評ZINE『Merca』(アニメルカ×マンガルカ×ジャズメルカ)主宰。アニメ/マンガ論を『ユリイカ』などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
TwitterID:@ill_critique
Merca公式ブログ

単行本情報

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