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『分校の人たち』第2巻 山本直樹 【日刊マンガガイド】

2015/12/23


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『分校の人たち』


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『分校の人たち』第2巻
山本直樹 太田出版 ¥1,100+税
(2015年12月10日発売)


この心地よさはいったい何なんだろう?

インターネットの情報などとは無縁の世界で、少年と少女が好奇心のおもむくままに互いの体で遊びあう。
今のところ、それ以外に物語らしい物語もなければ、台詞らしい台詞もなく、ただ彼らの行為のみが淡々と描かれてゆく。

恋愛感情もなければ、損得勘定も何もない。ただ互いの体への好奇心だけで結ばれた2人の関係が、純粋なだけにエロイ!

 

あっさりした細い線で描かれた未成熟な体も、無邪気でぎこちない言動も、何もかもがエロすぎて、ページからエッチな空気や匂いや音までもが漂ってきそうなのだが、その反面、読んでいると不思議に穏やかで満ち足りたものに満たされてゆく自分がいる。
わいせつ極まりないのに、なぜか澄んだものを感じさせる作品だ。

田舎の分校のたった2人の生徒であるドバシ♀とヨシダ♂は、要は楽園のアダムとイブであり、彼らが本能だけを頼りに、手探りで快楽をつかみとってゆく様には「セックスの本質」をまざまざと見せつけられる思い!
今のご時世、コレがネットで公開されてるって、いろんな意味でヤバイよなあ……と思いつつ、あらゆる性の情報が氾濫する一方で、コミュ障といわれる若者たちが増え、三次元での「セックス離れ」が騒がれる時代だからこそ、こういうマンガが必要なのではないか? と本気で考えたりもする。

2巻では転校生のコバヤシ♀の登場により、2人だけの楽園に嫉妬や羞恥心といった感情が芽生え、その感情がさらに彼らの行為をエスカレートさせてゆく。
微妙な均衡を保っている3人の関係は、今後どのように変化してゆくのか? 母親たちの「カミサマの集まり」や、彼らを覗きみる大人の影も気になるところで……。

どうか、この心地よい世界観はそのままに、新たな展開にも期待!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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